7 イヴトー

2年前のフランス旅行の旅行記1〜34〜7)。一年ぐらい前一回更新したけど、このままでは読者(が居るとして)に、というか作者に忘れられてしまうので、また忙しくなる前にとりあえず再開しておきます。で、この機会にflickrというのに登録しました。いいですね、これ。というわけで、フランスの写真を以下に順次載せていこうと思っています。
http://www.flickr.com/photos/7691363@N04/sets/72157600053953207/
前にも書いたように、ノルマンディー地方ルーアン(Rouen)に2週間、パリに1週間、という具合に滞在したのですが、ルーアン滞在中に、エトルタ(Etretat)とフェカン(Fécamp)という有名な観光地に行きました。今回はその話を書こうと思います。
エトルタというのは、断崖絶壁*1で有名な海岸の観光地です。ここは、サルトルがリセの哲学教師をやっていたル・アーヴル(Le Havre)という港町にも近いので、ついでにル・アーヴルにも行って、サルトルが教えていたリセも見てこよう、という計画でした*2
土曜日の朝出発するつもりが遅くなってしまい、ルーアン駅12時ぐらいの電車に乗りました。まずル・アーヴルに行って、その後エトルタに行く予定で、1時ぐらいにはル・アーヴルに着くはずでした。駅のキオスクでは、極左系の機関紙といった趣の新聞が普通に売っていたので、面白くて買ってしまったりしたのですが、思えばこの時なにか食べるものを買っておかなかったのは失敗でした。
電車はすいていましたが、私のそばには中学生ぐらいの少女たち4人ぐらいのグループがいました。これがまあ、日本でいえばまさにコギャル、ザ・コギャル(あ、ラ・コギャルか)て感じで、笑えました(ていうかコギャルっていまや死語なんですね)。派手かわいいといった感じのファッション(もちろん制服ではありませんが)の彼女たちは、靴のまま足を座席に乗せまくるわ*3、車内で携帯でしゃべりまくるわ*4、写メとりまくるわ、やかましいやかましい……この、電車で化粧するゲーム脳のケータイを持ったサルどもめがっ(笑)
窓の外に見える風景はというと、こんな感じです。
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そうこうしているうちに、出発から20分ぐらいで、イヴトー(Yvetot)*5という最初の駅に停車しました。相変わらず、レ・コギャルは大騒ぎです。で、結構停車時間長いなあ、と思っていたのですが、10分たっても、15分たっても、発車しない。時刻表を見るともう次の駅についていてもおかしくない時間だったので、何かトラブルがあったのかな、と思いはじめました。窓の外を見ると、ホームの上を、ジャンパーを着た普通の格好のおっさんが携帯電話で話しながら歩き回っています。そしてこのおっさんが電車の運転手らしいのです(日本と違って制服を着てたりはしないようだ)。乗客の1人が、列車を降りて、運転手(らしき人)に事情を聞き始めました。会話の内容はよくは聞き取れなかったのですが、どうもなんらかの列車のトラブルで停車しているらしい。そして、なんと2時(そのとき1時前ぐらい)まで動かないというのです。運転手さんの「2時」という言葉が聞こえた瞬間、ユヌ・コギャル(1人のコギャル)が「ぴゅった〜〜ん!!」という素っ頓狂な声を上げました*6。というわけで乗客は次々と列車を降り、伸びとかをはじめました。
で、運転の再開時間のことなのですが、それは、故障の修理がその時間に終わる、ということではないのです。結局、後から来る列車*7を待って、その列車に連結し、押していってもらう、ということなのですね。修理をすぐあきらめて安易な解決法を選ぶところ、また、土曜日とはいえ、主要な路線の電車の本数がそんなにも少ないところ、などが、いかにもフランスらしい、のかなあ?などと考えながら私も列車をおりました。
まあ面白い体験ができたので、待つこと自体はよかったのですが、とてもおなかがすいてきて困りました。2時まで(いやルアーヴルに着くのはもっと先だ)がまん出来るだろうか、と不安になりながら、何か食べるものが売っているようなところはないか、と駅の外に出ました*8。駅の外は、食べ物屋さん、というよりお店があるような雰囲気は全然ない。あきらめて駅に帰ってきたら、幸い、自動販売機がありました。そこで、飲み物と、スニッカーズみたいなのを買ってなんとか空腹をしのぎました*9
そうこうするうちに後続の列車がやっときて、連結作業がはじまりました。
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野次馬が集まっています。


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何気なく「連結器」部分を見てみると……。


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…………。


というわけでやっと列車が動き始めました。(続く)

*1:私は「断崖に立つサルトル」という気取ったタイトルの論文を昔書いたのですが、それは、サルトルの主著『存在と無』の中に出てくる、断崖を歩く男の話について書いたものです。

*2:エトルタはモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンの『奇岩城』の舞台でもあります。

*3:まあヨーロッパでは靴脱いだほうが「はしたない」んでしょうが。

*4:ただし少なくとも私が見た限りフランスでは車内携帯禁止というマナーは特にないようでした。

*5:実は記憶があいまいなのですがたぶんそう。

*6:ピュタンというのは「売春婦」というのが元の意味のお下品な感嘆詞……ですが結構使われるみたいですね。

*7:写真を見ると貨物列車ですね。

*8:日本と違って改札がないので出入り自由です。

*9:SELECTA IIとかいう赤い旧式の自動販売機なのですが、フランスではこの一種類の自動販売機しか見かけませんでした。