10 信号機たち

 フランス人は信号を守らない、という話はフランスに行く前もちょっと聞いたことがありました。実際に行ってみると、本当にそうでした。
 というか、日本で「信号無視」というと、「信号を見ながらあえて違反する」か「信号を見落とす」という意味かどちらかだと思います。が、フランス人の信号無視は、文字通り「無視」、つまり「最初から信号を見る気がない」なのです。しかもそれは、「そういう人もいる」というレベルではなく、私が見たところ、そもそも道を渡るときに信号を見ているフランス人は一人もいませんでした。これは大げさではないようです。たとえばgoogle:フランス人 信号でちょっとぐぐってみると、フランスの交通事情についての驚愕の事実をいろいろ知ることができます*1
 というわけで、誰も信号を見ていないのなら、フランスにおいて信号機はいったい何のためにあるのか、という話になるわけで、フランスにおける信号機というのはほとんどトマソン物件であるようです。
 ところで、(日本在住のみなさん)日本の歩行者用信号機って、どんなものか覚えていますか? 毎日のように見ている人も多いはずですが、案外覚えていない、という人もいると思います。暇な方は記憶スケッチでもしてみてください。






 ……思い出しましたか?では正解です。

青が下とか、歩行者は左向きとか、なんかひさうちみちお風なシルエットだ、とか、私も改めて見てはじめていろいろ気がつきました。
で、日本の場合はこういうクイズがおそらく成り立つんだと思います。どういうことか、というと、おそらく日本全国どこでも歩行者用信号は同じものだと思うからです。ということでもうお気づきかもしれませんが、フランスの場合、交通信号の形が全国統一規格がある、なんてことはそもそもないようです。それどころではなく、同じ街の中でも信号の形はまったくまちまちでした。というわけで写真を撮ってきたものをいくつか紹介しようと思います。まずルーアンで撮影したものから。
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これはわりとフツーなものだと思います。日本と違って横に並んでいて、右側が青です。ここまではかろうじて統一されているようですが、後はてんでバラバラでした。たとえばこれ


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こいつはなんかポッケに手を入れて、やさぐれた感じの歩き方です。くわえタバコとかしてそうです。さっきとちがって右向きです。


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こいつは、かなりドットが荒いですが、ていうかなんか微妙に黄色いのが気になります。


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一方これは、周りが四角いバージョン。中の人も、さっきと同様ポッケに手を入れていますが、それだけではなくてカバンらしきものを持っています。左足の上げ方とか、そこはかとなくおしゃれです。昔建物の完成予想図に書いてあった通行人の絵のようです。


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これは同じ信号の赤ですが、これまた、ファッションショーのモデルのポーズのようです。さすがフランスです。
しかし、右側にたまたま写っている交通標識のヨゴレぶりはすごいですね。ていうかシールや落書きでほとんど見えなくなっている。これも日本ではありえないかな。こうした交通標識も、たぶん誰も見てない、てことなんでしょうね。


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これはパリですが、この素朴なドット絵風味もなかなかかわいらしい感じです。


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同じくパリですが、これはかなり古いものなのかな。ドット絵がこれまた非常にぞんざいな感じです。というか、この人は歩いているように見えない。犬のウンコを踏んで立ち止まって下を見ている、という感じです。


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同じ信号の赤ですが、こいつは、首なしです。首なしでこれまで紹介した中で一番ドットが荒いにもかかわらず、ひじに手をついて威張っています。


という具合で、いろいろあってなかなか面白いのですが……最初にも書いたようにフランス人はこれ誰も見てないんですよね。そういうところがまさにトマソン物件というしかないですね。