凶悪な殺人事件

以下は、過去に実際に起こったいくつかの事件の概要です。

  • (事件1)日曜日の朝、救急隊員は、25歳と31歳の姉妹の遺体をみつけた。彼女たちの両親と2人の兄弟も殺されていた。
  • (事件2)犯人に2人が撃たれ、放置されて失血死をし、1人の少女が家で撃たれて、救急車が到着せず、死んだ。
  • (事件3)自宅で撃たれた男性は救急車が到着せず、失血死した。
  • (事件4)子ども10人を含む56人が死亡。犠牲者の最年少は生後2日の赤ちゃん。負傷者は189人に及ぶ。
  • (事件5)60歳の母親と35歳の兄が殺され、他に9人が負傷した。
  • (事件6)銃に撃たれて、4人の子どもたちが殺され、1人が重体となった。殺された子どもたちは、7歳、8歳、11歳、14歳だ。
  • (事件7)サッカーをしていた少年ら3人が殺された
  • (事件8)20歳の学生、20歳の運転手、22歳の会社員が、ひとりの家が所有するバンガローにやってきて、食事の用意をしていたところ、殺された。

たとえば上のどれかの事件と同じような事件が今日起こったとしたら、今日の各社のニュースではおそらくトップニュースに近い扱いで必ず報道される、と思われるでしょう。
ところが、これらの事件は、ほとんど報道されなかったのです。

で、実は、上の事件は、すべて同一の場所で起こったのです。

で、実は、上の事件は、すべて同一の場所で同一時期、しかもほんのここ数日の間に起こったことなのです。

その場所では、先週の火曜日から3日月曜日朝まで大量殺人が行われ、115人〜117人が殺され、負傷者は300人にのぼるそうです。

ところが、私は、昨日(3日)の早朝の日テレニュース、昨日の11時半からの民放各社のニュース、12時からのNHKニュース、今日(4日)の早朝の日テレニュース、11時半からの民放各社のニュース、12時からのNHKニュースを見ましたが、この大量殺人事件は、まったく報道されませんでした*1

しかも、大量殺人は先週はじまったというわけでもない。過去3ヶ月でも、パレスチナガザ地区では200人以上がイスラエル軍によって殺されたそうです。それに対して、パレスチナ側に殺されたイスラエル人は1人ということです。
ちなみに私は新聞はとっていませんが、Yahoo! JAPANのトップページで取り上げられトピックスの日ごとの一覧を見ても、3月3日3月2日2月24日から3月1日のバックナンバーのどこにも、ガザのニュースはありません。Yahoo! JAPANニュースの「海外」コーナーにはニュースがあるが、それは、中東情勢、およびテロリズムの分類に入っている。……もちろん、「テロリズム」とはイスラエル軍の行為のことを言っているのであると信じたいですが。
もう一度書いておくと、ここ3ヶ月で殺されたパレスチナの市民は200人、殺されたイスラエル人の市民は1人(イスラエル兵士は2人)です。これに対して、イスラエルの「過剰な武力行使」とパレスチナ武装勢力の「テロ行為」を非難し、「双方に」攻撃の即時停止を求める声明を発表する、とか言うのが、流行の「バランス感覚」やら「中立」やら言うものなんでしょうか。
それで、今日4日NHKの昼ニュースのトップは、日本の捕鯨船への抗議行動(もっとも、どこのニュースも「抗議」行動とは絶対に言わず、必ず「妨害」行動、と言っていますが)で負傷者が出たニュースで、高村外相と冬柴国交相の顔が映り、二人とも「許しがたい暴挙」とか「国際社会に訴える」とかということを言っています。
こちらによると、イスラエルの国防副大臣であるマタン・ビルナイは、先月29日、イスラエル軍放送で次のようなことを語っていたそうです。

カッサムロケット弾がさらに撃ち込まれ、遠くまで着弾するようになれば、パレスチナ人はわが身のうえに大規模なショアーホロコーストを引きよせることになるだろう。というのは、我々は防衛のために全力を使うからだ。

しかし、イスラエル軍の暴挙に対して、日本政府が国際社会に訴えたというニュースは今のところまったく聞きません。というか、その暴挙自体がほとんど報道されないという現状なわけですが。
一方、昨日3日のNHK昼のニューストップも、やはり捕鯨船のニュースでした。バターやチーズに入っている酪酸ブチル酸)がかかったそうですが、目を洗ったら治ったそうです。これが「負傷」ではないとはあえていいませんが、それを言うなら、日本のテレビ番組では、もっと危険なことを罰ゲームと称して日夜放送しています。はたして二日連続でトップニュースで扱う内容なのか、と疑問に思います*2
以下は、http://0000000000.net/p-navi/info/のトップに表示される最近の記事の冒頭をつなげたものです。

3日(月)の明け方、イスラエル軍はガザの各所で空爆や砲撃を行い、7人が殺されたとガザの病院筋は発表している。侵攻を受けていたジャバリヤ難民キャンプでは3人が殺され、住人数人が負傷している。ほかにもヌセイラート難民キャンプやガザ市で武装グループメンバーが空爆によって殺されている。

イスラエル軍はこの朝、侵攻していたジャバリヤなどから一旦引き上げた。

水曜からのパレスチナの死者は115人〜117人、負傷者は300人にのぼるとされている(メディアにより、数字には若干の幅あり)。

また、ラマッラー近郊の村では抗議のため、平和的なデモをしていた19歳の学生が頭部を撃たれて殺された。イスラエルのメディアによると、ユダヤ人入植者が身の危険を感じて発砲したということになっている。

2008.03.02
日曜、10人が殺される 西岸でも少年が…

3月2日(日)のガザの状況……これまでに入った情報によると、ガザのジャバリヤで新たに10人が殺されている。

日曜日の朝、救急隊員はジャバリヤ難民キャンプの爆撃を受けた家で、25歳と31歳の姉妹の遺体をみつけた。彼女たちの両親と2人の兄弟は前夜の爆撃で殺されていた。

午前中はほかにも3人が殺されている。2人は撃たれ、放置されて失血死をし、もう1人の少女も家で撃たれて、救急車が到着を軍に阻まれ、死んでいる。

午後にも同じ悲劇が起きた。自宅で撃たれた男性は救急車が到着を阻まれて、失血死した。

また、ハマスのカッサム団メンバーを狙った空爆で2人が殺され、数人が負傷している。イスラエル兵との衝突で負傷していたイスラーム聖戦系アルカッサム団のメンバーも死亡した。

ガザ、ジャバリヤでの死者56人に / イスラエル首相宛手紙サンプル

1日(土)の明け方から始まったガザのジャバリヤ難民キャンプへのイスラエル軍攻撃で、夜までに56人が殺されたというアップデートが入った。

ガザのパレスチナ保健省ドクター・ハッサニンは、ジャバリヤなどで殺された56人のうち11人が武装グループメンバー、他の45人(子ども10人を含む)が民間人だったと語っている。犠牲者の最年少は生後2日の赤ちゃん。負傷者は189人に及び、その大半が民間人であるとのこと。

これで火曜からのパレスチナ人の死者は100人となった。子どもはそのうちの4分の一、25人を占める。

ジャバリヤでは戦車からの砲撃、銃撃に加え、戦闘機からの空爆も行われている。一例だけ挙げると、1日午後5時半ごろ、イスラエル軍は23歳のハマス活動家ハリード・アタラーの家に3発のミサイルを撃ち込んだ。これにより、60歳の母親と35歳の兄が殺され、他に9人が負傷した。

2008.03.01
「ガザへの地上侵攻の準備はできた」イスラエル軍 [追加]

イスラエルのバラク防相によれば、イスラエル軍はガザへの大規模な侵攻の準備を完了したということだ。イスラエル軍はガザとのボーダーに集結していて、攻撃体制ができているという。バラクはいつということを明示しなかったが、侵攻は差し迫っていると語っている。

この発言は3日間に渡るガザへの爆撃の後でなされたもので、3日で35人が殺されている。過去3ヶ月でもガザでは200人以上がイスラエル軍によって殺された。それに対して、パレスチナ側に殺されたイスラエル人は1人となっている。 イスラエルの高官たちの「不吉」な発言も相継いでいる。

2008.02.29
なぜ、子どもたちが? さらにガザで子どもの犠牲者

来日していたオルメルト首相は「イスラム過激派に高い代償を支払わせる」と述べ、パレスチナ武装組織によるイスラエル南部へのロケット攻撃がやむまで空爆を続行する方針を27日に表明したという(AFPによる)。

けれど、殺された中には子どもたちが多く含まれている。ひとつ前のエントリにあったジャバリヤでの子どもたち4人殺害に続き、新たに同じくジャバリヤで子どもたち3人が遊んでいるところにイスラエル軍の砲撃が発射され、3人が死んだ。

殺された3人は、IMEMC Newsによると、
Bilal HIjazi, 13, Suleiman Hamada, 12 and Anas Al Mana’ma, 10.

27日にサッカーをしていた少年ら3人が殺されてから、これで12人の子どもたちがガザで殺されたことになる。とくにジャバリヤでの2件の子どもたち殺害は、子どもを狙って撃ったような印象を受ける。なぜ、子どもたちが「代償」を払わないとならないのか。

ガザ、死者数が増加 さらに子どもたちが5人も

数時間の間にガザでの火曜からの死者数が18人から27人に増加している。今の段階では詳細が入ってきていないので、きちんとしたことはわからないが、28日(水)に新たにイスラエル軍による攻撃がなされているようだ。

ガザ市で砲撃を受けて殺された25歳の青年などの話とともに、水曜にはラファで12歳のアムジャッドくんがイスラエル軍に銃撃されて殺されている。

さらには水曜午後、ジャバリヤで戦闘機から撃たれて、4人の子どもたちが殺され、1人が重体となった。殺された子どもたちは、7歳、8歳、11歳、14歳だ。いったい、どうしたら子どもたちばかりを狙えるのか。

2008.02.28
ガザでサッカーをしていた少年3人がミサイルで殺される ほかに赤ちゃんも

またもやここに人々が「殺された」ニュースを書かなくてはならない。そんなニュースにはうんざりだ。あまりにも多すぎる。ただ、こうも思う。イージス艦によって二人の人の命が奪われたことが無惨であるのと同じように、ろくに報道もされずに殺されていく人々がいるのだ、と。やはり、それを書き留めておきたい。

27日(水)の夕方、ガザ北部のアルトゥワンで、サッカーをして遊んでいた少年たちの上に、イスラエル軍のミサイルが落とされた。日本語でこのことを報道した毎日新聞は「ガザ北部ではパレスチナ人の子供3人が死亡した」と一行だけの言及をしている。

IMEMC Newsによると、イスラエル軍はその付近にあるロケット発射台を狙ったという。しかし、その横では少年たちがサッカーをして遊んでいた。3人が即死し、 17人が負傷。そのうち3人が重体で、集中治療室に入っていると病院筋は語っている。今はこれくらいしか情報が入っていない。

情報が錯綜しているが、この26、27日には少年たちが殺される以前に7人(または9人)がパレスチナで殺されている。

2008.02.26
ピクニックに行って殺される ほか

23日の午後、ガザ北部のベイト・ハヌーンで3人のパレスチナ市民がイスラエル軍によって殺された件で調査をしていたパレスチナ人権センター(PCHR)は、殺された3人がピクニックに出かけていたことを発表した。

3人はベイト・ハヌーン東部にあるナザーズ地域でピクニックの準備をしていた午後3時40分ごろ、ガザ地区とのボーダーにあるイスラエル軍基地から発射された地対地ミサイルに直撃され、命を落とした。この3人は20歳で学生のタラルさん、20歳で運転手のイブラヒームさん、22歳で会社員のムハンマドさんの友人グループで、ひとりの家が所有するバンガローにやってきて、食事の用意をしていた。バンガローはイスラエルとのボーダーから1.2キロ離れたところにあった。

2008.02.24
非暴力の抗議で負傷者あいつぐ ほか

金曜日は有名になったビリーン村だけでなく、パレスチナ各地で様々な抗議行動やデモが行われる日だが、この22日の行動では何箇所もで多くの負傷者が出た。
6歳と8歳の子どもを含んだ4人がイスラエル兵に殴られて負傷したのは、ベツレヘム南部のアル・マサラ村。70人ほどの村人と外国人、イスラエル人支援者が、村の土地の上に建てられた不法な壁に抗議義して平和に行進していたが、封鎖された出口を越えて村の土地に向かおうとしたところ、イスラエル兵士に警棒で殴られた。兵士たちは若者たちに唾を吐きかけたり、ひどい言葉を浴びせたりして、挑発をしたが、その挑発に乗るものはいなかったという。

毎金曜日に壁への抗議行動を行っているビリーン村では、抗議を開始して3周年の記念すべき日だったが、イスラエル軍が作っている封鎖のところまで行進してきたところ、催涙弾や音響爆弾が発射され、参加者15人とジャーナリスト1人が負傷して、病院で手当を受けた。ビリーンでは、1月末に日本人旅行者も目をゴム弾で撃たれ、重傷を負っている。

下は、ヤフーからとった毎日配信の記事です。

ガザ地区パレスチナ自治区)前田英司】「私は(イスラム原理主義組織)ハマスでも何でもない。なぜ、こんな目に遭わなければならないのか」−−。先月27日以降、イスラエル軍の攻撃にさらされるパレスチナ自治区ガザ地区パレスチナ人死者数は2日、100人を超えた。墓地では犠牲者増を見越して新しい墓穴が準備されている。 

【ルポ】 写真特集 パレスチナ自治区ガザ地区 エジプト境界壁壊れる

 ナセル・アルボライさん(29)は2日、ガザ市の自宅で、生後6カ月で逝った長男ムハンマドちゃんの写真を見つめていた。先月27日に写真スタジオで撮影したばかり。

 撮影から帰宅後間もなく、自宅前のハマス内務省」が空爆された。がれきが寝室の天井を突き破り、ムハンマドちゃんが下敷きになった。「この写真が遺影になるとは……」。アルボライさんが怒りに肩を震わせる。

 ガザ北部ジャバリヤに住むアヘド・ハッサンさん(46)は「今朝、妻が流産した」と明かす。妊娠3カ月。「精神状態が不安定だったに違いない」

 1日午後8時半ごろ、イスラエル軍から自宅を空爆すると電話で警告された。ハマス系大学で食堂を経営しているが、狙われる覚えはない。退去を拒否すると「残る人生は数分だ」と告げられた。

 脅える妻と8人の子供たち。親類や近所の人が駆けつけ、「人間の鎖」を作って抗議した。結局、攻撃は免れた。「これもガザに生きる運命だ」。ハッサンさんは自分に言い聞かせるように語る。

 イスラエル軍が侵攻しているジャバリヤ東部。軍ヘリが機銃掃射を繰り返し、戦車の移動音が響き渡る。地元住民によると、付近はパレスチナ武装勢力イスラエル領内に撃ち込むロケット弾の発射拠点という。ある男性(47)は「イスラエル軍に報復されてロケット弾攻撃の代償を払うのは武装勢力ではなく、我々だ」と憤りを口にした。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080303-00000011-mai-int

*1:昨日の夜のニュースは見ていませんが、どうだったんでしょうか。

*2:非暴力直接行動を過剰に醜悪かつ凶悪に描いて「テロリスト」という印象を与え、日本のお国をしょった船が「被害者」となったんだ、ということを、ことさらとりあげる。まさか、お国をしょった船が「加害者」となったあの事件のニュースを中和しよう、と思っているわけではないでしょうね。