「夢見る機械」の新宿

昔出そうと思っていてそのままになっていたネタです。だいぶまえ、諸星大二郎の「夢見る機械」という短編についての文章を書いたのですがhttp://d.hatena.ne.jp/sarutora/20050604/p1 この物語は、新宿が舞台で、物語の後半、現実の新宿西口あたりの風景がいくつも出てきます。マンガが描かれたのは1970年代なのですが、現在も新宿ではほとんど同じ風景を見ることができます。というわけで、新宿に行ったとき、なるべくマンガと同じ構図の写真をアドエスで撮影して、そのうちブログにのせようと思いながら一年ぐらいたってしまいました…。
まず、物語では「ユートピア配給会社」という会社の秘密の入り口があることになっている「新宿の目」です。これは西口地下街にあるオブジェなのですが、まだあります。





つぎに、主人公がこの秘密の地下街から、巨大な通気口を通って地上に脱出するシーンです。この通気口も実際にあります。ただ、現在はだいぶつたに覆われているのですが、30年前は違って表面が現れていたようです。同じ方向から撮影しました。

こちらは遠くに小田急の看板が見える方向からですが、看板のデザインは昔と変わっています。

この風景も撮影して比較したかったのですが撮り忘れました。

と、いうわけでそれだけのことなんですが、ついでにもう一つ。新宿の目のすぐそばには、「夢見る機械」が描かれたときには存在しなかったものがあります。それがこれです。


あんまり動いているところを見たことがない「動く歩道」ですが、これは96年ごろできたそうです。さて、この動く歩道の上の方に、行き先表示のようなものがありますが、よく見るとその上部になにやらとげとげしたものがついているのがおわかりでしょうか。

これはなにかというと、駅の看板などにもときどきありますがつまり鳥、というかハトがとまらないようにするための、ハトよけというやつですね。
さて、このハトよけから、目を左下に転じると、こんなものが見えてきます。


この妙なものは何かというと、一応公式には「オブジェ」ってことになっているらしいですが、実際のところは、これはすぐそばのハトよけのとげとげと同じ機能をはたすためのものなのですね。ただしこの「オブジェ」が「よけて」いるのは、ハトではなくて人間なのですが。
ちなみに、この「オブジェ」を見ると、私はいつも岡本太郎の「座ることを拒否する椅子」という作品のことを思い出してしまいます。こんなのです。

まあ、新宿のできのわるい「オブジェ」も、まさに「座ることを拒否する椅子」なのですが、これは、人間を拒否し排除しようとする暴力が物質化したもの、という意味で、二〇世紀の負の遺産として鑑賞の価値があると思います。