ニート漫画家?

 仕事以外でめずらしく都心に出かけたのは、逆柱いみり展を見に行ったからです。ビリケン商会http://www.billiken-shokai.co.jp/ というところでやっています。日曜の6時頃行ったのですが、とてもせまいギャラリーで、お客さんは私一人でした。店の人、ないし関係者らしき人が3人いて、しかも私のすぐそばでずーっとギョーカイ話っぽい雑談をしていました。と言うわけで、絵を見ていても、「店の人、私のことを、『コイツはどういうヤツなんだろう』と思っているんだろうなあ」とどうしても意識してしまって、鑑賞に集中できませんでした。サルトルの他者論じゃないけど、やっぱり、見られているという意識があると、見ることに集中できませんね。もう一回、今度はもうちょっとお客さんが居そうな時間に行こうかなあ……といってもいつだろう?
 ところで、『アックス』44号の逆柱いみりのインタビューが面白いので、少し引用してみます。

――それでは新連載についてうかがいますが、最近は本当に作品を多く描いてますね。
逆柱 本当は全然描きたくないんです(笑)。つい連載と言ってしまって「しまった」と思って。

 「『ガロ』系といわれるマンガ家生活をずっとやっていて、今思う事とかありますか?」という質問に、上手いのに辞めていく人が多い中「なんで自分がずるずる続けているのかが良くわからないです(笑)」と。で、

――でもずっと続けていこうとは思われているんですよね。
逆柱 もう辞めようと思っていたんです(笑)。
――それはいつくらいに?
逆柱 こないだ(笑)。たびたび思いますね。

 あははは

逆柱 最近は絵本ばっかり見てます。長新太の絵本が面白いです。たまにコンビニとかでマンガ雑誌は手に取ってみるんですけど読めないんです。読み方が分からない(笑)
(……)
なんか頭を使う気がしないんです。気力が出ないというか。4コマが限界です。テレビのドラマも見れないんです。ちゃんと見ればたぶん面白いんだろうけど。

 しかし、一応リップサービスか、「マンガはアックスのものは読みます。ダメな人物を描いたものが多いので入っていけます。」と。で、

――ダメなところに惹かれるというのは?
逆柱 自分がダメだから(笑)。ダメな人というよりクヨクヨしてる人かな、好きなのは。あんなに脳ミソ開ききった絵本描いてるのに、なぜか日記読むと長新太はクヨクヨしてる。町田康もボヤいているし。RCサクセションなんかも内向的な歌がけっこうあったりして。
――そういうひとじゃないと共感できないですよね。くよくよするのとか、ダメだと思うのをなおしたいと思う時期があるじゃないですか、そういう事は思ったりしますか?
逆柱 それは今は無いです。人と接することが多いとダメじゃないようにしようと思ったりするでしょうけど、あんまり人には会わないですから。
――対人間ということでそういう事を思うわけですからね。
逆柱 会社とか学校に行ってるとリアルにダメな感じがするじゃないですか、引きこもってしまうのもいいかもしれないです、人によっては。
――マンガ描くのは引きこもるところがありますからね。だんだん歳を取ると開き直るというか、これはこれでいいんだと思う事はありませんか?
逆柱 かっこつける必要もないし、かっこをつけてもいないですから(笑)。わりと捨て身のところもありますね。逆ですか、普通ヤングマンの時の方が捨て身ですか?
――若いときの方が、かっこつけたがるから守っている部分が多いような気がします。
逆柱 それがまたかっこ悪かったりして(笑)。まあ、10代20代の頃より今の方が楽しいです。
――それはどうしてですか?
逆柱 …………、なんとなく(笑)。
――(笑)そんだけためといて、なんとなくというのがいいですね。
逆柱 なんか楽になった感じがします。それと結婚したのが大きいですね。

 ヤングマンの時より、歳をとったら捨て身になって楽になった、というのはちょうど私も同じようなことを考えていました(逆柱さんは、私より一個上です)。でもね……私もそうなんですが、「楽になった」といいつつ、「クヨクヨする」んですよね、これが(笑)。ていうか、「クヨクヨしてもいいんだ」と楽になるのか。
 まあでも、とかなんとか言っても、逆柱さんは、メジャーというわけではないかもしれないけど、コアなファンはたくさんにて、mixiのコミュでも展覧会の話題は盛り上がってるし、展示されていた作品は開催二日目にしてほとんど全て売れていたし。「ダメ」と言いつつ、こんなの「ダメのエリート」だ、とか、「勝ち組の『もう一つのライフスタイル』(@山田昌弘)」だ、とか言われちゃうのかもしれませんがね。