品格

 本屋*1で立ち読みをしていたら、背後のほうで「あのー、藤原なんとかってひとの本、よく売れてるって話の……ありますかね?」というような声が聞こえたので、見ると、スーパーの買い物袋を下げた60代か70代ぐらいの女性が、店員にたずねているのだった。
 id:kmizusawaさんのところで、「ごくふつーのOLっぽい人が店長に「「クニの品格」とかいう本あります?」ときいているのを見た」という話を読んだばっかりだったので
http://d.hatena.ne.jp/kmizusawa/20060327/p3)さりげなく近づいて、立ち読みするふりして観察した。店員に、本の場所(レジ前に平積みされていた)まで案内されたその人は、「ああ、あったあった!これだこれだ、はいはい、ありがとさん」とか言って、本を手に取った。彼女は、ちょっと頭を後ろにのけぞらすようないかにも老眼らしいしぐさで、まず表紙を眺めた。そして、満足げに二・三度うなずいたかと思ったら……「あー、そうそう!ほーんとに、品格なくしてるわよねぇ!」と大声で独り言。うわ、本のタイトルと会話はじめた……とか思っていると、つぎに、「どれどれ」て感じで、表紙をめくり、カバー見返しにある内容紹介文を声に出して読み始めた!(ちなみに片手は買い物袋でふさがっているので、片手でめくってます)。吹き出しそうになりながらチラ見で観察をつづけていると、しばらくして、「はー、あれまあ!」とかいいながら……本を置いた!そしてレジの方を向くと「はい、どうもありがとさん。また来ます〜。今日はちょっとね、見に来たんだけどもね。娘が、いい本だから読めっていうもんだからさ〜。売れてんだってね〜この本。また買いにきます〜。はい、は〜い、お世話さん。」とか言いながら、去っていった。
 ……ていうか、買わんのかい! というオチまでつけてくれたのだった。笑えた。たぶん、表紙だけでお腹いっぱいになったのだろう。よかった(のか?)まあわたしもこれを目撃できただけでお腹いっぱいになり、何も買わずに店を出たわけだが。

*1:東京都町田市のKまざわ書店