ディス・イズ・ボサノバ

「ディス・イズ・ボサノバ」観てきました。
もっているけどほとんど読んでいない『ボサノバの歴史』
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ていう分厚い本があるのですが、この本を映像と音楽でわかりやすく解説、という感じの映画だということです。ボサノバ創成期のエピソードを、ミュージシャンや評論家のインタビューに古い映像を交えながら紹介する、という感じです。主な語り手はホベルト・メネスカルとカルロス・リラの二人です。この二人のオッサンがギター片手に時々演奏しながら昔話をして、その合間に他の人のインタビューや演奏や、古い映像がはさまる、て感じです。ただ、アントニオ・カルロス・ジョビンナラ・レオンといった重要人物はすでに亡くなってるので昔の映像のみです。ジョアン・ジルベルトは生きてますが、やっぱりインタビューはありませんでした*1。紹介される人物も曲もとても多くて、インタビューも映像もかなりブツ切れでした。それから、昔の映像はともかく、現在のインタビュー映像も全然統一がとれてなくて(例えばジョビンの息子のパウロ・ジョビンの映像は妙に画質が悪かったけど何なんだろう)、全体としてツギハギみたいな感じの映画でした。しかしその辺は、まあそういうもんだと思えばそれほど気にはなりませんでした。ただ、ボサノバのことはまったく知らない、という人が観たら、いまいちよくわからないんではないかな、とは思いました。映画用に撮影された演奏としては、ワンダ・サーがよかったように思いました。
古い映像もいろいろ面白かったですが、特に、ジョビンとジェリー・マリガンの白黒映像が面白かった。と思ったらYoutubeにありますね。この映画で紹介されていた他の古い映像も大体Youtubeにあるようです。

ジョビンとマリガンがワン・ノート・サンバをやっている、というか練習しているのですが、マリガンはバリトンサックスではなくクラリネットを吹いてます。お互いに「ボサノバ難しいっすね〜」「いやいや、ジャズも難しいっすよ〜」みたいに気を使っているのが可笑しい。
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ジョビンといえば、『ゲッツ・ジルベルト』の録音の時、一人だけ英語ができたので通訳をしたのだけれど、ジョアン・ジルベルトが「この白人野郎にお前はバカだといってくれ」と言ったのを、「彼はあなたとレコーディングするのが長年の夢だったといっています」と変換するなど、大変だったという話ですが*2、気を使う性格だったのでしょうか。マリガンも、上の映像だけを見ると、ゲッツと違っていい人っぽいですけど。
ジャズとボサノバの関係というのも単純ではなく、ジャズはボサノバに影響を与えたことも事実ですが、同時にボサノバを利用し、搾取した、という側面もあり、その意味でジョビンなんかはジャズに対して非常に複雑な感情を抱いていたらしいです*3

*1:ジョアン・ジルベルトの奇人ぶりは、メネスカル、カルロス・リラがインタビューで語るエピソードからも十分わかりました。

*2:http://www.ojihall.jp/topics/interview/jazz/getz_gilberto.html

*3:その辺のことはこの映画ではちらっと出てきますが、この映画はあまり難しい話は出てこなくて、楽しい思い出話が中心です。