京急の快特乗車目標

毎週、京浜急行線(京急横浜駅で「快特」という特急電車に乗ります。で、京急横浜駅のホームには、写真のような「快特乗車目標」という目印があって、「快特」に乗りたい人はこの目印の前に並んでいればいい、というようになっています。


ところが、この目印が、わかりにくいことこの上ないのです! 実は京急の「快特」には2種類あって、2ドアの車両と3ドアの車両があります。車両の両端にはどちらの車両もドアがついているのですが、車両の真ん中へんには、3ドア車両しかドアがないわけです。というわけで、乗車目標もこの2種類の車両にしたがって変わってきます。そうした事情から、上の写真ではわかりにくいですが、乗車目標というのは以下のようになっています。

これはもうほんとに「分かりにくい表現」の典型だと思います。藤沢晃治氏の『分かりやすい表現の技術』に従うと、これは以下のような様々なルールに違反しています。

  • 視覚特性(見やすさ)を重視せよ
  • 欲張るな。場合によっては詳細を捨てよ
  • 情報に優先順位をつけよ

まず、この二つの目印、ぱっと見て区別がしづらい。デザインも、基調となる色も同じ(緑)。唯一違うのは、ドア数を示した小さい字と、三つ並んだ○の色です。しかし、○の色の違いにしても、黄色と白、というこれまた識別しづらい色合い。
さらに、下半分の領域、これが明らかに情報を欲張りすぎています。まず、「2ドア…」などの文字記号と、○印というシンボル記号を両方使っている点で欲張りすぎ。さらに、シンボルの方も、「○の数」と「色」という2つのファクターを使っている点で欲張りすぎ。
もう一つ言えば、情報の重み付けが足りない。2種類の目印のどちらが重要かといえば、それは、3ドアしかとまらない車両真ん中の乗車目標のはず。なぜなら、両端の目標の前には、どっちにしろドアはあるのだから、並んでいる人が、次に来る電車が「どのタイプの車両か」という情報を聞き逃したとしても実害はない。しかし、真ん中の目標の場合、次に来る電車が「どのタイプの車両か」ということが重要になります(2ドアの車両の場合そこに並んでも無駄になる)。
目印がこのように分かりにくいおかげで、案内放送もわかりにくくなります。2ドアの車両が来るときホームでの放送はこのように複雑になる*1

次の快特電車は、2ドアで参ります。お足下の快特乗車目標のうち、白い丸と黄色い丸のついた目印の前に2列にお並び下さい。白い丸のみの乗車目標の前にお並びになってもドアは開きませんのでご注意ください

大体情報をもりこみすぎだし、何ステップか頭を使って考えないとわからないような文句を、電車をまってボーっと並んでいる人が、集中して解読するはずがないです。
というわけで、少なくとも私がこの場所で2ドアの快特を待っているときは、必ず、3ドア用の車両真ん中の乗車目標の前に並んでしまう人がたくさんいます。で、実際に電車が来たときはドアがないので、あれ?て感じになって両脇の列の最後尾にあわてて並びなおす。私も、最近は慣れたけど、最初はよく間違えていました。
というわけで、もっといい案もあるかもしれないですが、せめて以下のように改善すれば大分わかりやすくなるように思うのですが。

改善点

  • 全体的に色を変えて識別しやすくした。
  • 丸印は廃止してシンプルにした。文字は補助的な情報として残した。
  • より重要な車両真ん中へんの乗車目標を大きな字と比較的目立つ赤色にした(重み付け)

これだと、案内放送も、2ドア車両だとしても以下のように比較的シンプルにできます。

次の快特電車は、2ドアで参ります。緑の快特乗車目標の前に2列にお並び下さい。赤い乗車目標の前にお並びになってもドアは開きませんのでご注意ください

ついでに言うと、「2列に」というのがまたわかりにくい。これも上の写真ではわかりにくいのですが、ホームの上の印はこのようになっています。

これは、上記の本によると

  • 複数解釈を許すな

というルールに違反していると思います。というのも、これ、「2列にお並び下さい」という文字が「2つ」あって、さらに、そのそれぞれの文字の下に矢印の列がこれまた「2つ」づつある。というわけで、これは、矢印に一人ずつで総計4列で並べ、という意味なのか、それとも矢印は2つセットで一人の人の「両足」を示していて(サイズ的にはそうも思える)、つまり青い文字の前に総計2列で並べ、という意味なのか、どっちやねん……ていうことが、いまだにわかりません。

*1:正確ではないがたしかこのような感じ。