PowerPointでイラストを書く(3)

PowerPointでイラストを描く(1) - 猿虎日記

PowerPointでイラストを描く(2) - 猿虎日記

の続きです。

 まず、開いた図形の作り方。前回やったように、「フリーフォーム」で頂点を設定していき、出発点あたりにもどってきてクリックをすると、図形は自動的に閉じた図形になります。

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しかし、 出発点にもどらず、途中でダブルクリックすると、線は閉じず、開いた図形になります。

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閉じた図形を開いた図形に直すこともできます。「頂点の編集」から「パスを開く」をクリックし、その後余分な頂点を削除すればよいです。

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 描画ツール≒ブラシツール

 さて、ここからは前回予告した話です。前回説明したように、PowerPointの「フリーフォーム」は、Illustratorの「ペンツール」に近いもの(のよう)です*1。これは、頂点(Illustratorでいう「アンカーポイント」)と、白い四角い点(Illustratorでいう「ハンドル」)を操作しながら、ベジェ曲線を使って図形を描くツールです。手書きの線のようにはなりませんが、むしろ手書きの線のようにはしたくない、均一でなめらかな線を書きたい場合に便利なツールです。

 一方、PowerPointには、「描画」という機能があります。これは、最近付け加わった機能のようで、昔のPowerPointにはなかったと思います*2。この機能は、Illustratorでいう「ブラシツール」に近いもの(のよう)です。「フリーフォーム」(やIllustratorのペンツール)とは違って、「描画」の場合、手書きのような線を書くことができます。描画機能は、リボンの「描画」タブをクリックします。すると、3本のペンと、1本の鉛筆と、1本の蛍光ペンが出てきます。それぞれ、色や太さを変えることができます。

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 マウスで線を描いてみます。こんな感じで、フリーフォームや曲線ツールと違い、手書きのような太さの変化のある線がかけます。

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 例えばMSペイントのようないわゆるペイント系ソフトで描いた線は、前回説明したように「ラスタ形式」なのですが、しかし、PowerPointの「描画」機能で描いた上の線は、手書き風に見えても、やはり「ベクタ形式」になっています。「描画」機能で描いた線がベクタ形式だというのは、太さを変えたり、拡大縮小したり、変形したり、がきれいな線のままで自在にできるというところからわかります。たとえば、上の線を選択すると、それぞれの線がオブジェクトになっていて、移動したり、拡大縮小したり、太さや色を変えたり、が、図形と同じようにできます。

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 ただし、描画で描いた線を選択しても、フリーフォームとは違って「頂点」は出てきません。というわけで、フリーフォームのように、一度描いた曲線の曲がり方を変えたりといったことはできないようです。

 で、『イラストで読むキーワード哲学入門』のイラストでは、この「描画」ツールもときどき使っています。とくに、哲学者の似顔絵はすべてこの「描画」を使って書きました。ここで、哲学者の似顔絵をどうやって描いたかをせつめいします。

 たとえば、デカルトですが、まず、デカルトの有名な肖像画PowerPointのスライドに貼り付けます。

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 次に、描画機能を使って、この肖像の輪郭線をなぞります。

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 途中、下絵のない状態での仕上がりを確認しながら作業をすすめましたが、PowerPointにはレイヤーという機能は基本ないので、しかたなく、「下絵削除」→仕上がり確認→「command+z(windowsならctrl+z)で「やり直し」で下絵復活」、の繰り返しで確認作業をしました。こういうところはイラスト専用ソフトではないめんどくささかもしれません。

 作業が終わったら、下絵を削除して完成です。

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 この作業、実は最初はマウスでやっておりました。しかし、マウスだと、さすがに時間がかかり、肩こりと目の疲れがひどそうだったので、結局途中から安いペンタブレットを買ってしまいました…。が、液晶タブレットではないので、マウスよりは多少楽かな、という感じでしたが。 

 というわけで、こんなふうないろいろな作業をしつつ、基本すべてのイラストをPowerPointで作りました。Illustratorなどよりは機能が低いとは思いますが、そのぶん操作がシンプルで、私としてはPowerPointで絵を書くのはありではないかと思いました。

ファイル変換について

 次に、ファイル変換の問題です。私は、一枚一枚のスライドに一枚一枚のイラストを描いていったので、たとえば100枚のイラストを書くとそれが100枚のスライドがあるPowerPointファイル(拡張子は「pptx」)になります。

 しかし、このファイルはそのままではInDesignなどのDTPソフトに取り入れることはできないと思いますので、DTPソフトでも使える形式に変換しなければいけません。メニューの「ファイル」から「エキスポート」で別の形式のファイルにするわけですが、そこで、jpgなどにすると、それはすなわち、前回説明した「ラスタ形式」に変換する、ということであります。せっかくなので「ベクタ形式」のままでファイルを送りたい、というわけで、PDFに変換しました。これで出版社との間でファイルの受け渡しができました。しかしこの辺、私はIllustratorInDesignのことはわからないので詳しいことはわかりません。

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 PDFでの受け渡しもしましたが、さらに、PowerPointからPDFに変換した上で、それを、フリーのドロー系ソフトInkscapeで読み込み、それをsvgファイルで保存する、というやり方で、svgファイルに変換することもやりました。

*1:なにぶんIllustratorを持っていないので、ネット情報からおそらくそうだろう、ということですが。

*2:ところで、私はMac版のPowerPoint for Office 365を使っておりますが、開発過程の機能だったのか、バージョンアップの過程で、一時この「描画」機能が消えていたことがあります(だと思います)。突然消えてしまって、しかも本のイラストを作っている最中だったので、困りました。その時は、メニューがどこかに隠れたのか、と思って探し回りましたが、ありませんでした……。現在は復活しています。