「入管法改正は問題あり!難民保護の制定を!院内集会 」高橋済弁護士発言抜粋

入管法改正は問題あり!難民保護の制定を!院内集会 」高橋済弁護士発言抜粋(省略したり少し言葉を補ったりしています)

●問題の本質

 政府はいままで、在留資格がない外国人、子どもには何をやってもいい、どう扱ってもいい、というスタンスで法律を作り行政運用してきてしまった。在留資格がないからといって、その人の人権が失われたり軽んじられたりしていいということではない。オーバーステイ、不法残留だからといって、その人、その子どもの人格的危険性、犯罪性が上がるわけではない。我々と同じ人。単に、法律上の在留資格という紙っぺら一枚がないだけの話。最近アメリカや国連で、「イレギュラーirregular」、「イリーガルillegal」、ではなく「アンドキュメンテッドundocumented」という言葉が使われ始めている。同じ命、人権がある、という前提のもとに保証がなされている。

●政府案の「改正課題」について

 政府は、入管法の改正課題は(1)送還忌避者の増加の防止(2)収容の長期化の防止、と言っている。
 まず、送還忌避者の増加、というが、立憲民主党議員の質問主意書で明らかになったように、過去五年の送還忌避者の統計は存在しないのに、なぜ増えていると言えるのか。
 また政府は、在留資格がないことによって収容される人が増えている、収容をなくすために送還をどんどんやっていこう、と言っている。
 しかし、在留特別許可(日本で生まれた子ども、日本人の家族がいる場合などに在留資格を与えるための制度)が与えられる比率が下がっている、という現状を忘れてはならない。前政権下で相当右肩下がりで下がった。これによって在留資格が得られない人が増えていった。
 難民については、難民認定率0.4%。99%以上が何回申請しても不認定のまま。不認定になるとその後在留資格がない状態になる。
 つまり、在留資格がない人の送還を促進する、という発想の前に、在留資格を得られない理由は何なのか、を考えなければならない。上で述べた、恣意的な在留特別許可の運用や、99%以上ほぼ100%が難民ではないと言われる「難民不認定制度」(=迫害の危険がある人を迫害国に送還することを正当化するためだけの制度)が在留資格のない人を生み出している。そこを直さずに送還を促進するのは間違っていると私達は考えている。

●政府改正案の問題点

▼難民関連

 難民複数回申請は濫用、という前提のもと、3回目の申請中に、ミャンマーにでもどこにでも、判断を待たずに送還できるようになる。これでは難民条約がないのと同じ。100%不認定の難民制度のもとでこういった仕組みをつくるのは、条約が骨抜きになり、離脱するのと同じ。
 他方、政府は「入管が適切な難民保護をやります、運用で適切に保護します」と言っている。しかし、日本が難民条約にはいって40年間まともな運用ができなかった政府が、運用改善よりも送還できるようにするのを先にしたあとに、「運用で適切に保護します」と言っても信用できますか?
 また政府は「補完的保護」という制度をつくる、と言っている。難民ではなく戦争避難民を救う制度で、日本独自のもの。しかし、この制度は、研究者の誰に聞いても「補完的保護」という名称をつけてはならない、と言うくらい、保護とは別ものであり、ずさんなもの。救済するかどうかは入管の裁量であり、救済の範囲も場合によってはせばまるのではないか。全国難弁護団がファクトチェックしたところ、もともと現行法で救済される戦争避難民が10件しかないところ、この制度で救済される件数はむしろ5件減った。

▼在留特別許可

 前政権下で胸崎三寸で行われていた(右肩下がりで減った)が、(政府案では)原則不許可の類型をつくる。一年以上の実刑の人には在留特別許可を与えない。日本人の家族がいようと、日本で生まれた子どもであろうと、何があってもだめ。

▼送還忌避罪(退去命令違反罪)

 退去命令が出た後に従わなかった場合は犯罪者になるというもの。日本で生まれた子どもでもそう。政府はこれについて、限定したと言っている。告示で国を限定する、と言っている。しかし、政府が限定するだけで、いくらでも告示で国を増やすことは可能。今一カ国と言っていたとしても、将来色々な国が対象になることについては歯止めはきかない。

▼収容問題について

 これについてはメディアの方に特に訴えたい。「管理措置制度」ができるが、これは、収容する人を社会に解放するかどうか入管が決めて、入管が解放相当かどうかを判断する、というもの。昨年8月に国連の人権理事会の専門部会(恣意的拘禁作業部会)に指摘されていた、行政による恣意的な拘禁、恣意的な解放、という問題点は、これではまったく解消されない。また、収容できる期間(たとえばEUでは6ヶ月上限)を定めろ、ルールを定めろ、とも言われていたのに、彼らは、無期限の収容を維持する、と言った。裁判所の令状が必要だとも言われていたが、令状も不要、私達が適切に判断する、となっている。
 仮放免中は、働いていいとは言われていなかったが、処罰規定がなかったが、管理措置制度では、生きていくために子どもを食べさせるために働いたら処罰、働かないと生きていけないから逃げる、それも処罰。健康保険は今まで通り入れない。これのどこが社会内生活なのか。

●入管はフリーハンドのまま

 結局改正案は、外国人にあらゆる規制を課しているが、自らを規制するルール、規律(難民条約、国際人権条約である自由権規約から要請されるもの)を全く導入しなかった。入管が案を作って、入管が選んだ審議会が提言したものだからある意味当然。入管はフリーハンドのまま。この改正によって彼らが得るのは外国人を規制する権限だけ。

議員立法(野党案)について

▼難民問題

 運用で適切に保護します(法的担保なし)という政府案に対して、独立の難民認定機関をつくる(難民等保護委員会)。国際的基準を独立機関が法的拘束力をもたせる仕組みを採用している。99%以上が不認定になる制度だったものを、日本が入っている国際社会と約束してきた条約を守る制度に変える。それだけのことが40年間日本政府はできてこなかった。それを、今はじめて遵守して、難民を他国と同様に保護する国に変わっていこうと提案するのが議員立法

▼在留特別許可

 きわめて抽象的であいまいな一つの条文で決まっていた要件を具体化し、考慮要素として、児童の権利条約における「児童の最善利益」や、自由権規約という国際人権条約の「家族がともに生活する自由」を規定し、重視しなさい、としている。これもあたりまえのことだが、できてこなかった。

▼収容

 議員立法では、原則収容はしないとなっている。必要な場合(逃亡の危険がある)だけ。逃亡の危険は裁判所が判断する。収容の期限は6ヶ月で、その後は生活支援など適切な処置をしていく。日本の制度としては目新しいがヨーロッパでは原則この制度。今のようにいつまでも送還もできずに5年も6年も収容するという制度は正当化するのは不可能。
どちらが適正かはみなさまに判断してほしい。