12 そんなセッションな2(ニコを待ちながら)

※2005年春のフランス旅行記です。
http://d.hatena.ne.jp/sarutora/20070517/p1のつづき
というわけで、カードゲームに興じる店員を横目に、セッションがはじまるのを待っていたのですが、一向にはじまらない、というか、一向に客がこない。
で、肝心のセッション開始はいつか、ということなのですが、『パリ・スコープ』に書いてあった開始時間がいい加減だというのはすでに明らかです。たぶん、ホストミュージシャンが店に到着次第開始とかそんなところだろう、と思って、私はホストの到着を気長に待つことにしました。
「ホスト(ミュージシャン)」というのは、ジャムセッションを「仕切る係りの人」のことです。「セッション・リーダー」などとも言われます。ただし、フランスでは別の呼び方をしているようでした(しかしその単語がなんだったか忘れてしまいました)。
ホストは、日本では、プロ・ミュージシャンが行うこともありますが、アマチュアの常連が行うこともあります。ホストの役割は、日本の場合、(1)その日集まったミュージシャンの演奏の組み合わせを考えたり(つまりその場限りの即席バンドを編成する)、(2)必要な楽器が足りない場合、自ら演奏に加わったりします。(2)の役割をはたせるように、ホストは、ピアノ、ベース、ドラムスの3人が担当することも多いですが*1、そうでない場合もあります。
『パリ・スコープ』には、その店での当日のホストは、「nico」とだけ書かれていました。ニコというのはたぶん人名か芸名なんだろう、とは思いましたが、名前からだけでは、楽器は何なのか、いったいどんなスタイルの演奏をするのか、当然ながらまったくわかりません。
さて、私が店に来てから一時間ぐらいたったころ(つまり時計上は9時ごろ)になると、ちらほらお客さんがやってくるようになりました。最初はたしか、若い女性の二人組みがやってきました。店員とも知り合いのようです。ちらちら見ていると、なんかテープ・レコーダーのようなものを持っています。セッション参加者かもしれない、と思いました(日本だと、自分の演奏を録音するセッション参加者は多い)。ただ、肝心のホストである「ニコ」らしい人が来る気配がない。
で、店に人が入ってくるたびに「ニコが来たのかな?」と思ったけれど違って単なる客だった、ということが何回かあった後、背の高いアフリカ系の男性が店に入ってきました。彼が店に入ってくると、店員と、先ほどの女性二人組みが親しげに声をかけました。さらに、彼は客の入りをたしかめるようにゆっくりと店内を見回してから、女性二人のテーブルにすわりました。ホストミュージシャンぽい雰囲気です(アフリカ系=ジャズマンて、思い切りステレオタイプですが、それはともかく)。彼は何か酒を頼んで女性たちと談笑しはじめました。
ちらちら見ていたのですが、10分ぐらいして、ついに彼が立ち上がりました。「は、はじまるのか?!」と思ったのですが、ん? なんでその後女性二人も立ち上がってるの? ……すると、彼はカウンターの店員に声をかけて会計を済ませると、女性と連れ立って3人で店の外に出て行ってしまったのでした。マンガだったらズッコケの絵が出るところです。(つづく)

*1:この三つの楽器は「リズムセクション」といってジャズのバンドの必須要素的なものです。ピアノがギターやオルガンに置き換わったりすることもあります。