『これでは愛国心が持てない』

 本屋に行って、新刊を眺める(だけが多いがたまに買う)というのは、ほぼ日課だが、そうやって観察していると、文春新書の暴走ぶりが最近目立っているような気がして、笑える。そんな中、今日発見した文春新書は、上坂冬子先生の『これでは愛国心が持てない』である。
 書名を見ただけで、中身はまったく見ていないのだが、この書名には非常に感心した。
 そんじょそこらのウヨクのシトは、「愛国心を持て!」と言う。自分と違って愛国心を持っていない人たちを、サヨクと呼んだり、非国民と呼んだりするのだと思っていた。ところが上坂先生は違う。自分が愛国心を持っていないことを明らかにしてしまった。
 しかしもちろん、上坂先生が愛国心を持っていないのは先生ご自身のせいではない。サヨクとか戦後教育とかによって腐ってしまった今の日本のせいなのである*1愛国心を持っていないばかりか、もてないのは国が悪い、と言うのである。
 そんじょそこらのウヨクのシトは、よく、サヨクのシトたちに対して「そんなに日本が嫌いなら、日本から出て行け!」とか言っている。上坂先生も言われてしまうかもしれない。でもそんなことを先生は意に介さないからこんな書名の本を書いたのだろう。上坂先生は立派なサヨクだった。
 「これでは愛国心が持てない」というのは、翻訳すると、「あたしに愛国心を持たせて!」ということだろう。さらに翻訳すると、「あたしに愛されるようにあんた努力しなさいよ!」ということになる。これはすごい。昭和五年生まれの上坂先生だが、ジコチューな現代ギャルたちの共感を呼ぶようなタイトルに、ちゃんとなっている。上坂先生、ナウいなあ。

*1:たぶんそんなことが書いてあると思っているのだが、何分読んでいないもので、違ってたらごめんなちゃい。