兵糧攻め

 また大分間があいてしまいました。まあ、忙しいということもあるのですが。しかし、書くことがない、というか、ありすぎて書けないというか。私のページの数少ない貴重な読者から、「最近ホームページが勇ましいですね」とか、「政治的ですね」とよく言われます。私は、自分の政治ネタは、ひねりがなくてあまり面白くない、と思っているので、書いては自己嫌悪に陥ります。かといって、あえて政治ネタにまったく触れない、という勇気もなく、そもそも近況報告を面白可笑しく、というのも苦手だし……という感じで、定期的に、書く気力が減退します。まあ、といいつつこうやってまたぐずぐずとはじめちゃうんですがね。
 しかしあれですね、最近はテレビだけではなくて新聞を読むのも憂鬱ですね。朝日に世論調査の結果が載っていました。内閣支持率は54%で前回調査の45%から上昇、というのは、もういちいち何か言う気力もわきません……。しかし、「食糧や医薬品を援助することには61%が反対だった」というのを見ると、いやになってしまいますね。「25万トンの食糧や1000万ドル相当の医薬品を国際機関を通じて北朝鮮人道支援することには、過半数が「反対」と答えた」と、いうのですが……。実は私、かつて一度、無作為抽出と思われる朝日新聞の電話アンケートを受けたことがあります。今回もそれと同じだったとすると、「日本が25万トンの食糧や1000万ドル相当の医薬品を国際機関を通じて北朝鮮人道支援することをどう思いますか?賛成ですか?反対ですか?」というように質問され、それに対して、半分以上の人が「反対です」と答えた、ということですかね?(いや、ちょっとは躊躇し、ためらったりしたのだ、と思いたいですが、そのためらいを映し出せない世論調査の仕方にもおそらく問題が大ありでしょう)。私たちは、顔が見えない人間に対しては、そんなにも冷たくなれるわけですね。拉致家族にあんなにも激しく同情した私たちは、「私は人道支援に反対します」と、堂々と言えてしまう、その程度しか「あちら側」の人間に対しては関心がないのです。こんなことを言うと、良識派ぶっている、とか、いい子ぶっている、と言われるんでしょうが。
 しかし、前から思っているのですが、「兵糧攻め」というのは兵法の一つであって、要は戦争の仕方の一つでしょう。しかも、今日の「経済制裁」は、大量の「非戦闘員」が死亡するわけだから、きわめて非人道的な大量破壊兵法、大量殺戮兵法だ。日本はこの大量殺戮兵法を使って、北朝鮮と事実上戦争しているわけです。しかし、それにしても「経済制裁」とは、そうしたことを覆い隠す、なんとイヤらしい言葉でしょうか。イラクについても、アメリカは悪いが、国連はいい、みたいに思っている人もいるようです。で、アメリカの侵攻以前に、湾岸戦争以来10年もつづいた「経済制裁」によって100万人とも言われるイラク人が死亡したにもかかわらず、そうしたことはアメリカ軍による爆撃以上に、ほとんど話題にならない。しかし、そのような非人道的大量殺戮兵法たる「経済制裁」にお墨付きを与えていたのが国連なわけです。

 というわけで、こんなものをいちいち相手にするのがバカだ、というのは重々承知の上で、日刊ゲンダイ5月25日3面

 山梨学院大教授の宮塚俊雄氏(朝鮮現代経済史)がこう言う。
「もともと破綻状態の北朝鮮経済ですが、02年7月から金正日総書記が始めた『経済改革』によってインフレが急ピッチで進行して大混乱しています。さらに 90年代後半の大飢饉で、コメは恒常的に毎年100万〜200万トン不足。国民の不満は危険水位に達し、怒りは爆発寸前です。死に体の金正日体制が内部崩壊するためには、このまま日本を含む各国が断固、経済制裁を続けていれば時間の問題でした。それを『盗人に追い銭』同然の小泉内閣の食糧・医療品支援がカンフル剤となり、延命させてしまう可能性があります」(……)
(……)金正日体制の内部崩壊を持っていれば拉致問題も自動的に解決したはずだ。それを政治的野心で先延ばしさせた小泉の責任は極めて重い。

 なんと「勇ましい」こと。記事には「金正日のヤクザまがいの脅し」云々という表現もあるけど、この記事を書いている人たちは、親分を殺るために、平気で何十、何百万人のカタギの国民を飢え死にさせろって言うわけで、こりゃヤクザもビックリすね。
 こういうことを言うやつらの頭の中はどうなっているのだろうか?とも思うけど……いやまてよ、この人たちの言ってるのは正しいかもしれない。

 「(……)今回のコメ支援も特権層がヤミ市場に横流ししてひと儲けする道具に使われたり、幹部の胃袋に入って終わるのが関の山です。(……)瀕死の国民が救われる保障はあり得ません」(北朝鮮ウオッチャー)

 たしかに、無駄な支援で国民の税金が無駄遣いされるのは耐えられませんね。同じ日刊ゲンダイに載っていた記事ですが

 そんな自衛隊の《本業》は人道復興支援。水をサマワ住民に供給しているが、隊員550人のうち、実際に水を作っているのは10人程度にすぎない。
 1日に約150トンの水を生産しているのだが、半分は隊員の風呂や便所に費やされ、残り70トン程度が住民に提供されている。1リットルノミネラルウオーターで「7万本」分に当たるわけだ。
 が、実はサマワの商店街では1リットルのペットボトルが日本円で30円で売られている。30円×7万本だと、費用は210万円なり。サマワ陸自の年間予算はすでに350億円を超えようとしている。つまり、1日に1億円を費やして210万円の水をせっせっと作っていることになる。50倍以上の無駄な予算をかけて作る「黄金の水」である。

 一日一億円で210万円の水を作るのが「関の山」。フランスのNGOが八倍もの量の水をはるかに低コストで作っているというそんな「人道支援」こそ、まっさきにやめるべきでしょうね。

 いや、それにね、宮塚キョージュやゲンダイの言うとおり、破綻状態の経済、ヤクザまがいの独裁者、私腹を肥やす特権階層、そんなトンデモない国の体制を内部崩壊させるためには、悠長にまっているだけではだめだ。兵糧攻めでもして、国民の不満を危険水位にまで上げてやるほかはないでしょうね。このトンデモない国、すなわち日本の食糧自給率はたった40%。こんな国を締め上げるのは赤子の手をひねるより簡単だ。とにかく、イカれた独裁者に54%もの支持率を与えてしまうようなアホな国民にわからせるにはそのぐらいしないとね。