嗚呼、若者たちよ

 本日、結局ほとんど寝られないまま某大学で3コマ授業。午後の授業は、へろへろにチカレていたのですが、相変わらず、教室がすごくうるさい。実は「言語コミュニケーション」という授業なのですが、受講者達はお互いのコミュニケーション活動に忙しくて、教師とコミュニケーションをとる暇がないという罠。何度注意してもダメなので、久しぶりにちょっとキレてみました。でもまあキレて効果があるぐらいだったら、もともとこんな居酒屋状態にはならないわけで。憤懣やるかたない気分のまま3階の教室を出て、階段を駆け足ぎみに降りたところ、降り切ったところで、茎゛ッ!!と。やっちまいました。寝不足のところに、パソコン等で10キロ近い荷物を背負っていたことが悪かったのでしょう。超!……痛かったのですが、さっきキレてた教師が、直後に転んで足を引きずっている姿など、ギャグ以外の何ものでもないので、なるべく学生諸君に見られないように、あわてて大学を後にしました。しかし、バスに乗って駅についてもいっこうに痛みが引く気配はない。で、私の居住地である某駅に着いたのですが、こりゃだめだ、と、その足で駅近の整形外科に。レントゲンを撮った結果、「捻挫」ということ。というわけで、生まれて初めて、ギブス体験。といっても、取り外しの出来る簡易なギブス。最近のギブスは進歩してるんですね。あっという間にできました。とにかく固定する以外に治療法はない、という感じで、湿布と、念のための痛み止めをもらいました。
 さて、実は水曜日は、私、某駅前の教室で某習い事をしておりまして、いつもならいったん家に帰るのですが、今日はそのまま駅前で食事したり喫茶店で予習したりなどして時間をつぶし、そのまま教室に望みました。熱血先生の授業はいつもながら白熱して、結局終わったときには夜12時ごろでした。やれやれ、と帰宅の途についたのですが、しばらく歩いているうちに、授業中は忘れていた足の痛みが再び襲ってきました。やはり歩くと足に衝撃がくるので、だんだん痛くなってきて、しばらく歩いたところで、もうほんとに一歩前に進むのもつらい感じになってきました。そんな時間ですから通りにはほとんど人がいません。家は、駅からほんとに近くて歩いて5分ぐらいなのですが、その5分の距離がとてつもなく遠く感じられます。ガードレールにつかまり立ちして、どうしたもんか、と佇んでいました。駅前といっても、裏の方なのでタクシー乗り場はありません。乗り場まで歩くのがすでにつらい。すると、通りの向こうから一台のタクシーがやってくるのが見えました。運良く空車マークです。おずおずと手を挙げたのですが、無情にも通り過ぎて行ってしまいました。その後は全然タクシーなんて来やしません。トラックが停車して商品の積み卸し作業をしていたので、運転手にたのんで乗せていってもらおうか、とも思ったんですが、積み卸し作業は延々と続き、これはすぐには終わりそうにありません。仕方なく、リュックを担ぐと重いのでズルズル引きずりながら、そろりそろりと歩き始めました。裏側といっても駅前なので、家族を迎えに来た車も何台か私のすぐそばに止まっていました。おれも乗せていってくれ、と思いましたが、さすがにたのむ勇気もなく、しかたなくズルズル歩いていました。これと言うのも、教師そっちのけで会話に花を咲かせている某大学の若者どもが悪いのだ、教室は居酒屋じゃないっつの、ぷんぷん、などと昼間の怒りを反芻していると、ちょうど、居酒屋教室に座ってしゃべっていても不思議ではないような、遊び帰りと思われる、こういってはなんですがちょっとカルーい感じの若者グループがどこからともなく現れました。ちょうど解散するところらしく、三々五々車などにのって散っていきます。あー、その車に乗せてくれんかなあ、などとつぶやきながら足を引きずっていると、グループの中の一カップルが、歩いて私の横をとおりすぎて行きました。その時、奇跡は起こった!彼氏の方が、こう言うではありませんか。「……大丈夫ですか、荷物持ちましょうか」「……いや〜、重いから……」「平気ですよ」と荷物を持ってくれるではないですか。OH!神様!さらには、しばらく歩いたところで、こう言うのです。「この近くですか?」「ええ、○○一丁目なんですけど……」「オレ、近くに車とめてるんで、乗っけてきますよ。ちょっとここで待っててくれませんか」Σ(゜□゜;OH!!!アンビリーバボー!仏様!!アラー様!!「ええ!?ほんとですか?いやー、ほんとたすかります!ありがとうございます!」感謝感激胸一杯です。車を待っている間カノジョの方とも少し話をしましたが、いいお嬢さんじゃった。というわけでやってきた、ちょっと車高が低いような黒い車に乗せてもらって、うちの前まで送ってもらいました。「お気をつけて。」「お大事にー。」という言葉とともに走り去っていった彼等の車を、わたくしが、滂沱の涙を流しながら、いつまでも、いつまでも、見送ったことは、もちろん、言うまでもありません。
 というわけで、一日の最後に、鬱々を吹き飛ばすすばらしい体験をさせていただきました。同じ某駅前で、喘息で死にそうになっていた時は、通りすぎるオジサンオバサンは誰も助けてくれなかった。やっぱり若者はすばらしい!若者万歳!ニッポンの未来は明るい!なに?授業中の私語?どんどんやりたまえ!ていうか教室って居酒屋だし。むしろそれ常識。ていうか今度からお通し出す。
 ていうのは冗談ですが、いや真面目な話、名前も聞かずちゃんとお礼も言えませんでしたが、某駅在住のカップルの方、ほんとにありがとうございました。探偵ナイトスクープで依頼して探してお礼がしたい。小枝探偵きぼんぬ。