『正論』の世界から抜け出してきたような

 今日夕方、喫茶店でノーパソを開いて授業の準備をしていたら、近くの席に、たぶん70代の白髪の老人(男性)二人連れが座って、大きな声で話しはじめた。聞くつもりなくてもうるさいので内容が自然と耳に入ってくる。まずは、お定まりの若者の犯罪増加話。
「15とか16とかで人殺しちゃうんだから、オソロシイもんだね。」
「オソロシイ世の中になったもんだね。」
 ていうかあんたたちが少年だったころの少年の殺人件数は今の倍以上あるんですが(昭和30年代の少年の殺人件数は今の5倍以上だけど)。その前にあんたたちやもうちょっと上の世代が若者のとき国家の命令でしてた人殺しはどうなるのか、て気もするけど、まあいいや。で、その後の話の展開のあまりのみごとさにコーヒー吹きそうになった。
「教育がやっぱり問題だね」
日教組とか、ああいうのがね」
「ああいうのは困ったもんだね」
 あまりのワンダホーな展開に聞きほれてしまい、おもわず現実と虚構の区別がつかなくなりそうになった。『正論』の世界に紛れ込んだかと思った。
 その後、彼らの話題はまた若者批判に(上の日教組話とか、ディティールはもっと面白かったのに忘れてしまった)。
「最近の子供は忍耐力がないね。」
「昔だったら親のいうことは一目置いたね。」
「親と年長者ね。」
「今は全然そういうことがないから。」
 その後は、床屋政談の定番である現在の政治家批判がちょっとはさまった。ただこの辺よく聞こえなかった。
「政治家が逃げてる」
「政治家がみんなトカゲの尻尾斬りでね」
 とか何とか言っていた。
 その後は、今度は若者の性の乱れ批判。どうも何か具体的な事件に関する話題らしいが、私は最近ワイドショーねたまったく知らないので何の事件かはわからなかった。
「高校生で、二歳の子どもがいるんだそうだよ!」
「そんなこんながすったもんだで……(聞き取れず)したんだって。」
「おそろしいねえ……。」
「13のときに作っちゃってんだから。」
「我々13のときといったら親がおっかなくてね、怒られるれるのが。」
 で、さんざん若者をモンスター化したあと、怖い、怖い、と言い出した。
「夜一人で歩くのやだね。気持ち悪い。」
 さて、次はアジア批判。だんだんうんざりしてきたしよく聞こえなかったがどうも靖国がどうとからしい。
「言うことはっきりいってもらいたい」
「韓国が」どうの……
とか言ってたが
「中国だってそうだ」
「あとになってひっこめたけど、あんなの徹底的に叩いてやればいいんですよ。」
「何でもいいなりにね、なってちゃいかんでしょ。」
 で、次の話題は……
ゴールデンウィークはどちらに行かれますか」
 うわー、見事すぎる!なんなの、この完璧な展開……。
「ああ、あのあたりはつづじがキレイでね……」
 で、私はノーパソを閉じて、喫茶店を後にした。
 帰り際、[やれやれ][これはひどい][老害]etc.…((c)id:umeten)というタグを背中に張っていこうかと思った。*1

*1:国家の品格』を結局買わなかったオバサンのことを書いた後、あーいう人を嘲笑うのはいかんのではないか、とちょっと反省しかけたのだけど、すいません、やっぱ撤回します。面白すぎるので笑うしかないです。あと、国会を33万人取り囲んだ世代の人たちも、どうしようもないな、と思いました。