倒産

 齋藤氏の上記のコラム、結びの文章は、こうです。

 ちなみに、〔モノポリーができた〕三五年の米国といえば、大恐慌からようやく脱しようとしていた時期である。破産して路頭に迷うような生活をしていた人が、なお懲りずに破産ゲームを楽しんでいたわけだ。資本主義の奥深さと、人間の欲深さを感じずにはいられない。

 ところが、今日の日本の破産した人々は、「懲りずに破産ゲームを楽しむ」どころではないようです*1。このコラムと同じ雑誌に「年間の自殺者は四〇〇〇人超!追いつめられる中小企業経営者」という記事(p.14,15「本誌 松本裕樹」の署名)が掲載されているというのは、皮肉なものです。

警察庁の自殺統計によれば、二〇〇三年の自殺者は三万四四二七人。うち自営業者は四二一五人で、毎日一二人の経営者が自殺している計算*2。左ページのグラフでわかるように、一九九八年以降はずっと四〇〇〇人を超えており、いっこうに減らない。
 (……)一般に、自殺未遂者は、自殺者の一〇倍いるといわれる。自殺統計には出てこない”自殺予備軍”の経営者は数万人に上るともいうから深刻だ。
「最近では、借金返済のために両腕を切断してまで保険金を手にしようとする経営者も少なくない」と大手保険事故調査会社の関係者は打ち明ける。(強調引用者)

 この記事によると、「自殺に追い込まれるのは、第三者である連帯保証人よりも、むしろ連帯保証人に迷惑をかけたことに責任を感じた経営者である場合が圧倒的に多い」ということです(「自身が多重債務のすえに自殺未遂を図った経験もある倒産回避コンサルタント」の指摘)。胸が詰まる話です。
 さらにこの記事では、景気が回復基調にあり、企業倒産件数も3年連続で減少しているというのに、なぜ経営者の自殺は減らないのかということについて

  • 倒産統計に反映されない「廃業」が増えている
  • 銀行の不良債権最終処理

 という二つの要因が挙げられています。後者については次のように説明されています。まず、今年三月期までに不良債券化率を半減させることを義務づけられた大手銀行が、大量の不良再建を債権回収会社サービサー)に売却したこと、そして「サービサーのなかには、連帯保証人への執拗なコンタクトや、脅しとも取れる言動などにより、法の許す限りで厳しい返却を迫る会社も少なくない(同じく上記の経営コンサルタント談)」ということ、それが、経営者を自殺にまで追いつめている、と。
 「『借り手』を保護する新法制定が焦眉の急」だと言う松本裕樹記者のこの記事、結びの文章は、こうです。

「貸し手=銀行」優位を前提にしてきた融資取引の根幹が、今、問われている

*1:ていうか、35年の米国でもそうだと思いますが。

*2:自営業者という枠をはずせば毎日100人が自殺していることになるわけですが。