嘘つき火事場泥棒と、嘘を暴く弁護士と、後ろ弾を撃つ泥棒の応援団

 児玉晃一弁護士の「論座」記事「『ウクライナ避難民』を口実に入管法案を再提出するなら火事場泥棒だ」

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の要約解説です。

 

バナナもおやつに入ります(でもおやつは10円以内です)
 5つの理由(難民条約が定める人種、国籍、宗教、特定の社会的集団、政治的意見)に該当しなくても「迫害を受ける恐れがあるという十分理由のある恐怖」があれば準難民として認定しますよ(政府)
 ↑
日本の難民申請がほとんど認められなかったのは5つの理由に該当しないからではなく「迫害を受ける恐れ…」について国際常識に反した厳しすぎる判定していたから。
 例えるなら「おやつにバナナも入れていいことにしました」と言ってまるで規制を緩めたかのような言い方してるが、もともと「おやつは10円以下」というような常識はずれの厳しすぎる基準がおかしかったということ。そしてそれは政府が再提出をねらっている改正案(旧法案)でも変わらない。 

 

去年廃案になった法案はウクライナ避難民を保護できる法改正です(嘘)
 ウクライナ避難民は現状では難民認定できないので、去年廃案となった入管法改正案をもう一度通して「準難民」として保護します(政府)
 ↑ 嘘

今回報道された「準難民」というのが、旧法案の「補完的保護対象者」と同じものであれば、ウクライナからの避難民はまず該当する人はいないと断言できます(児玉)

補完的保護で今まで以上に保護できるようになります(嘘でした)
 廃案となった(そして再提出しようとしてる)旧法案の「補完的保護」では今まで保護されていた人も逆に保護されなくなる。
 2017〜19年に人道配慮で保護された18件に補完的保護の基準を当てはめると13件が保護されなくなる。

 

難民保護しまーす(タリバンに銃で脚を撃ち抜かれた人も戦下のアフガニスタンに強制送還しましたけど)
 日本政府はタリバンに脚を銃弾で撃ち抜かれたアフガニスタン難民が日本で難民申請した際、単なる内戦の被害者だから難民ではない、と、当時米軍によって空爆を受けている真っ最中のアフガニスタンへの強制送還を命じた。東京地裁、東京高裁もその判断を是認した。

 

ウクライナ避難民を保護しますよ(2年かかるけど)
 去年廃案の旧法案では、「補完的保護」には難民認定手続が必要となっていた。そして難民認定手続の「標準」は6カ月なのに、日本では平均2年以上かかっている。ウクライナ避難民に対してもそのぐらいかかることが見込まれる。

 

現行法ではウクライナ避難民は保護できませーん(嘘)
 国連難民高等弁務官事務所が2016年に公表した「国際的保護に関するガイドライン12」に従えば、ウクライナ避難民のほとんどは「難民」として認定・保護されるはずなので、そもそもウクライナ避難民を保護するために新しい法律の枠組みは必要ない。

ですから、新しい制度を設ける必要はなく、現在の難民認定制度の中で、UNHCRのガイドラインに沿って適切に難民認定をすればよく、もし難民として認定できない方がいても、人道配慮による在留特別許可をすればよいのです(児玉)

 

現行法では難民認定できない人も準難民で保護しまーす(その代わり人道的配慮のビザは出せなくなりますけど)
 また難民認定できなくとも人道配慮による在留特別許可をすることが現行法でもできるが、旧法案では逆にこれができなくなる(旧法案では人道的配慮による在留特別許可の条項が削除されている)

 

ウクライナ侵略に対応して法改正を急ぎまーす(専門部会の提言を7年間放置してましたけど)
 2014年の専門部会提言「難民条約上の難民に該当しないと考えられた場合であっても(…)国際人権法上の規範に照らしつつ(…)在留許可を付与するための新たな枠組みを設けることにより、保護対象を明確化するべき」を受けて準備していればウクライナ避難民も保護できていたが入管は提言を7年間放置していた。

 上記提言を受けて7年間以上も放置していたところ、今回のウクライナ危機を受けて、旧法案に盛り込まれていた「準難民」の概念を持ちだし、あれだけ批判を浴びて廃案に追い込まれた法案の再提出を目論む政府の姿勢。私は真っ先に「火事場泥棒」という言葉を思い浮かべました。
 ウクライナから庇護を求めてきた方々を保護するのは、現行法だけで十分対応できます。これに乗じて、どさくさにまぎれて、あれだけ多くの批判を受けた旧法案を提出する「火事場泥棒」は絶対に許されません。(児玉)

「難民を保護しますよ(政府)」←「嘘ですよ(児玉)」←「難民を受け入れるな!(ネット民)」

 以上「論座」児玉弁護士記事を要約紹介したが、これについているコメントが悲惨。
「立憲も今回の事態に便乗して難民受け入れ拡大を狙っている」
「ご都合主義の難民に日本を開放してはいけない」
「悪夢の民主党政権で改悪され、罪を犯した不良外国人に悪用されている入管法を必ず改正し…」

など。
 「(野党の難癖で)廃案になった旧法案は、本当は難民をより受け入れられるようになる法案だったので、再提出しますよー」という政府の嘘を批判する児玉さんに「難民を受け入れるな!」と言ってもそれは政府を後ろから殴ってることになってるのだがまあそんなことは彼らにはどうでもいいんだろうね。
 「難民・外国人を受け入れるな!」のコメントは、ある意味、政府の嘘の下に隠れた本音を暴いてしまっているとも言えるが、まあただ政府の本音は正確には「労働力は受け入れたいが居着かれるのは嫌」だけど。

 あとは、入管のこんな見え見えの嘘を批判的論評もなしにそのまま垂れ流すマスコミもどうかと思うし、児玉記事を「論座」に載せた朝日新聞も、入管のデマの報道官みたいな滝沢三郎のコメントと渡辺彰悟弁護士のコメントを「両論併記」みたいに載せた記事 

(ウクライナ侵攻)見える貢献、首相旗振り 国際社会や世論、意識 専用機使用、公平性に疑問も:朝日新聞デジタル

を出しているので、困ったものです。「デマ」と「正解」を「両論併記」であるかのように乗せると、デマがまともな論に格上げされ、正解への疑いが喚起されるので最悪です。滝沢三郎と渡辺彰悟を「両論併記」にするのは「太陽が地球の周りを回っている」と「地球が太陽の周りを回っている」を「両論併記」するに等しいですよ。