高市・小野田の発言は石破発言のコピペ

高市首相は、10月24日の所信表明演説で、外国人政策について次のように述べている。

 人口減少に伴う人手不足の状況において、外国人材を必要とする分野があることは事実です。インバウンド観光も重要です。
 しかし、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況が生じていることも、また事実です。
 排外主義とは一線を画しますが、こうした行為には、政府として毅然(きぜん)と対応します。政府の司令塔機能を強化し、既存のルールの遵守を求めるとともに、土地取得等のルールの在り方についても検討を進めてまいります。そのため、新たに担当大臣を置きました。

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 ここで言われている新たに置かれた担当大臣、とは「外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣」のことを指す。そして、この大臣に任命されたのが小野田紀美である。しかし彼女は、「外国人との共生」を推進する考えを持っているとはとても思えない人物だ。彼女は、2021年に参議院法務委員となってから一貫して入管法改定の強硬な推進派*1。2023年には、「移民政策はもちろん外国人の入国資格緩和等には常に反対してますよ」と言っている。

 2022年3月4日には、2019年の大村センターにおける餓死者も含め、1997年以降27人の被収容者が死亡している入管の収容施設の状況について

(被収容者が)飢え死にすることはありませんよ。我が国の国民の税金から5億円を超える食費をまかなって宗教などにも対応した50種類以上のメニューが3食支給されていますから。

などと言ったうえで、名指しはしていないまでも、明らかにウィシュマさんについてとわかる書き方で

活動家に唆されて、病気を理由にした仮放免を狙ってハンガーストライキして体を壊す方はいますが。
法律違反のゴネ得を認めるなど否。

などと言っている。

 これは、その後同年5月の国会で、維新(現参政党)の梅村みずほが発言し党からも処分を受けた問題発言とほぼ同じ内容である。
 また、2023年4月には、政府・与党が、在留資格がない子どもに在留特別許可を与える方向で検討しているというニュースに対して、Xで

とんでもない提案。そもそも日本の国籍は出生地主義では無く血統主義なので、日本で生まれようが育とうが関係ない。責められるべきは日本国ではなく不法行為で不安定な立場にした親の責任。感情で法を捻じ曲げたゴネ得は許されない。

などと書いている。

 さて、小野田は、高市の所信表明演説の二日前の10月22日、大臣就任記者会見で、次のように述べている(動画からの聞き取り)。

 外国人との秩序ある共生社会の推進について、一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用などにより、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況も現在生じております。
 排外主義に陥ってはなりませんが、国民の皆様の安全安心の確保は経済成長に不可欠です。ルールを守らない方々への厳格な対応や、外国人をめぐる現下の情勢に十分対応できていない制度、政策の見直しを含めた様々な課題について、関係行政機関との緊密な連携の下で、政府一体となって総合的な検討を進めてまいりたいと思います。

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(【動画】「排外主義に陥らず」 小野田外国人政策相、外国人政策見直しへ意欲 - 産経ニュース2025/10/22 )

 こうした発言には、小野田個人の排外主義的思想が色濃く現れている……ように見えるのだが、実はこの小野田の就任記者会見の発言には、小野田個人の言葉は微塵も含まれていないのである。
 というのも、就任記者会見での彼女の言葉は、前首相石破茂の3ヶ月前の発言と、ほぼ一字一句同じ丸コピだからである。参院選の真っ只中の7月15日、「外国人施策の司令塔となる事務局組織」として、小野田大臣の肩書「外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣」と全く同じ、「外国人との秩序ある共生社会推進室」という組織が内閣官房内に発足した。その際の訓示で、石破は次のように述べている。

『外国人との秩序ある共生社会推進室』の発足に当たり、一言申し上げます。
 少子高齢化や人口減少が進む我が国が、今後、成長型経済への移行を確実なものとするためには、一定の範囲での外国人労働者の受入れ、インバウンド消費の拡大などにより、海外の活力を取り込んでいくことが重要であります。
 他方で、一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用など、国民の皆様方が不安や不公平を感じる状況も生じております。
 国民の皆様の安全・安心の確保は、経済成長の不可欠の前提であり、ルールを守らない方々への厳格な対応や、外国人を巡る現下の情勢に十分に対応できていない制度・施策の見直しは、政府として取り組むべき重要な課題であります。

 こうした問題意識の下、本日、内閣官房に、外国人施策の司令塔となる事務局組織として、『外国人との秩序ある共生社会推進室』を設置いたしました。
 出入国在留管理の一層の適正化、外国人の社会保険料等の未納付防止、外国人による土地等の取得を含む国土の適切な利用・管理など、取り組むべき課題は多々存在しております。
 皆様におかれましては、これらの課題に的確に対処するため、省庁の枠を超えて緊密に連携し、外国人の懸念すべき活動に対する実態把握、関係機関のより緊密な連携を可能とするための国・自治体における情報基盤の整備、各種制度・運用の点検・見直しなどに取り組んでいただきたいと思います。
 国民の皆様も、高い関心をもって、政府の対応を注視しておられます。
 皆様が、その職責を十分に認識し、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けて、総合的・横断的に取り組んでいただくことをお願い申し上げ、私の訓示といたします。どうぞよろしくお願いいたします。

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 どうだろうか。赤字部分、取ってつけたような「排外主義に陥ってはなりませんが」という文句が加わっている以外、まったく同じである。よりわかりやすくするために該当部分を並べて引用しておこう。

小野田

一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用などにより、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況も現在生じております。

排外主義に陥ってはなりませんが、

国民の皆様の安全・安心の確保は、経済成長に不可欠です。ルールを守らない方々への厳格な対応や、外国人を巡る現下の情勢に十分対応できていない制度・施策の見直しを含めた様々な課題について、関係行政機関との緊密な連携の下で、政府一体となって総合的な検討を進めてまいりたいと思います。

石破

一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用など、国民の皆様方が不安や不公平を感じる状況も生じております。

国民の皆様の安全・安心の確保は、経済成長の不可欠の前提であり、ルールを守らない方々への厳格な対応や、外国人を巡る現下の情勢に十分に対応できていない制度・施策の見直しは、政府として取り組むべき重要な課題であります。

 ただ、小野田はそもそも「移民反対派」を自称しており、特定技能が導入された2019年の入管法改定には反対していたのだが、党議拘束があるので「党内の議論に負けてしまったら賛成するしかなかった」と言っている。

 だから、石破発言の「一定の範囲での外国人労働者の受入れ、インバウンド消費の拡大などにより、海外の活力を取り込んでいくことが重要」という部分はコピペせず省略したのかもしれない。
 それはともかく、石破辞めるなデモまでして石破の続投を求め、高市政権の成立を嘆く「リベラル」は多いようだが、少なくとも外国人政策に関しては、石破も高市も小野田も、全く変わらないのである。
 では、7月の石破の訓示が「石破の言葉」か、というと、実はそれもまた違うのだ。
 石破は、7月15日の「外国人との秩序ある共生社会推進室」発足の一週間前の閣僚懇談会で同組織の設置を表明しているが、この懇談会後の記者会見での林芳正官房長官(当時)の発言には「一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用など、国民が不安や不公平感を有する状況も生じている」という全く同じフレーズが見られる。
news.yahoo.co.jp
(政府 外国人共生に向けて新組織 一部外国人の犯罪・迷惑行為にも対応 7/8(火)日テレNEWS )

 しかし、そもそも、この「外国人との秩序ある共生社会推進室」というふざけた名前の政府組織は、もともと、ほぼ同じ名前の自民党の内部組織「外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会」の提言を受けて作られたのである。「外国人との〜特命委員会」は、外国人政策に関する自民党政務調査会の様々な組織を束ねて立ち上げられたとのことだが、6月6日に石破首相(当時)に「国民の安心と安全のための外国人政策 第一次提言― 違法外国人ゼロを目指して―」と題した提言を申し入れている。
www.jimin.jp

 この提言の中にある「近年、外国人の就労者や海外からの観光客の増加により、迷惑行為や国民の不安を招くような事態が発生しています」という部分が、例のコピペフレーズのもととなっているのだろう。で、この提言は、以下のような「3つの原則と3つの方針」からなっている。

1.3つの原則

  • 法令遵守の徹底:公の秩序の維持の観点も踏まえ、ルールを守る外国人を受け入れ、ルールを守らない外国人には厳格に対応
  • 制度の適正利用:制度の目的に反する利用を防止するため、制度・運用を適正化
  • 透明性の確保:土地の取得や制度の利用状況について、国籍等の実態を把握


2.3つの方針

  • 国籍等の情報を報告・共有する制度的枠組みの整備、および出入国・在留管理、土地利用、制度利用状況など、外国人に関する実態の把握
  • 政府機関や自治体のDX化を推進し、双方向の情報共有を可能にする基盤の整備
  • 関係省庁が協力し、継続的な実態把握および制度・運用の不断の見直しを行う司令塔体制の構築

 この、「3つの方針」の3つ目の「司令塔体制の構築」に従って、提言をした組織とほぼ同じ名前の「外国人との秩序ある共生社会推進室」という組織が政府内に作られ、「外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣」に小野田が据えられた、というわけなのだろう*2
 「3つの原則」の1つ目には「ルールを守る外国人を受け入れ、ルールを守らない外国人には厳格に対応」とある。しかし、「ルールを守る外国人を受け入れ」の部分は、小野田としては納得いかない部分だろう。自民党としては、「ルールを守らない外国人には厳格に対応」というところを、排外主義者たちに「外国人はルールを守らないから厳格に対応」と都合よく解釈してもらおうと思っているのではないか。
 ちなみに、この自民党の内部組織の提言「国民の安心と安全のための外国人政策 第一次提言」には、「―違法外国人ゼロを目指して―」というサブタイトルがついている。この「違法外国人ゼロ」や、「ルールを守らない外国人」という言葉から容易に思い起こされるものがある。上記自民党「外国人との〜特命委員会」が石破首相に提言を行った6月6日からさらに2週間まえの5月23日に法務省入管が発表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」である。この「ゼロプラン」は、「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている社会情勢に鑑み、不法滞在者ゼロを目指し、外国人と安心して暮らせる共生社会を実現する」ことをうたっているのだが、入管のサイトには以下のように書かれている(強調引用者)

 ルールを守る外国人を積極的に受け入れる一方で、我が国の安全・安心を脅かす外国人の入国・在留を阻止し、確実に我が国から退去させることにより、円滑かつ厳格な出入国在留管理制度の実現を目指してきました。
 しかし、昨今、ルールを守らない外国人に係る報道がなされるなど国民の間で不安が高まっている状況を受け、そのような外国人の速やかな送還が強く求められていたところ、法務大臣から、法務大臣政務官に対し、誤用・濫用的な難民認定申請を繰り返している者を含め、ルールを守らない外国人を速やかに我が国から退去させるための対応策をまとめるよう指示がありました。
 その結果として、「入国管理」、「在留管理・難民審査」、「出国・送還」の3つの段階に分け、各段階における具体的な対応策を「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」としてまとめました。

www.moj.go.jp

*1:ちなみに、21年の改定案が一旦廃案になったのは、彼女によると「一部野党とマスコミにネガキャンで潰されてその国会では廃案にな」った、ということらしいhttps://x.com/onoda_kimi/status/1566317104344621057

*2:2つ目の「DX推進」は笑ってしまう。