アンパンマンは、子供に大人気のようです。知り合いの知り合いの4歳の子供も、やっぱりかなりなアンパン中毒……じゃない、アンパンマン中毒だそうです。
先日、アンパンマンのキャラクター入り商品がたまたま目に入りました。
ジーっとみていて思ったのは、「これって、オッサンだよな……」ということです。
なぜこんなオッサンの顔が大人気なのか、と思ったのですが、そこでふと思いつきました。
「まてよ、ひょっとして、オッサンだから人気なのではないか」
そういえば、もうひとつ、子供に人気のキャラクターとして、「きかんしゃトーマス」というのがあります。これです。
そうです、これも、オッサンじゃないですか!
というわけで私は「子供には丸顔のオッサンが受ける」という仮説をたてました*1。
さて、「丸顔のオッサン」といえば、サルトルです*2。で、考えてみれば、現代の哲学者の中で、サルトルほど「キャラが立っている」人はいません。サルトルの本を読んだことがなくても、サルトルの顔は知っている、という人は多いでしょうが、ドゥルーズ、デリダ、ジュディス・バトラーの顔、っていってもぴんとこないでしょう。サルトルの哲学がかつて人気だったのも、そのキャラの力も大きかったかもしれません。
というわけで、このキャラ力を利用しない手はありません。サルトルをモデルにした、子供向けヒーローのキャラを売り出せば、バカウケ、バカ売れは間違いありません。のび太とか、オバケのQ太郎とか、フジコキャラも取り入れて、作ってみました。それが、これです。
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ヒーローの名前はアンガージュマン以外考えられませんが、ヒーローものといえば、敵キャラも重要です。アンパンマンで言えば、「バイキンマン」です。しかし、これも、問題なく決定です。アンガージュマンの敵キャラ、それは
じこぎマン
以外ありえませんね。
さて、アンパンマンは、もともと、おなかがすいた人に自分の顔を食べさせる、という設定だったようですね。で、サルトルの有名なせりふとして「飢えた子供の前で、『嘔吐』など一文の価値もない」というのがあります*3。
下は、サルトルの著作『言葉』の原書の表紙に使われているイラストです(上のセリフをモチーフにしてます)。
これも、アンガージュマン・バージョンも作ってみました。
それから、私にとっての「ヒーロー」サルトルを象徴する場面のひとつが、このシーンです。
これは何かっていうと、1970年、ルノー工場の前で樽に乗って演説するサルトルです。マオ派のアラン・ジェスマールという活動家が不当逮捕されて、サルトルはその裁判に証人として喚問されたのですが、彼は「法廷での証言など無意味だ」と言って、ビヤンクールのルノー工場の入り口の前で、樽に乗って演説したのです。これもアンガージュマン・バージョンを作りました。
ところで、このときのサルトルの演説、ルノー工場の労働者たちは誰も聞いていなかったそうです。このシーンは、サルトル的「行動する知識人」の愚かさを象徴している、サルトルの哀れな姿、として、あざ笑われたり同情されたりしています。
たしかに、この「樽」というのは、サルトルのまさしく「お立ち台」であって、しかも、無名の支持者にお膳立てしてもらったお立ち台です。サルトルは結局「無名の一市民として集会に参加することはしなかった/できなかった」というのを、たしか海老坂武さんが、サルトルの限界として総括していたように思います。
しかし、樽でもドラム缶でも、ぜんぜん気にしなかったというのが、やっぱりサルトルの超かっこいいところなのです。大学の教壇ていうお立ち台から降りるつもりすらさらさらない人で、「サルトル的知識人はだめなんだ」なんていってサルトルをあざわらう人*4がたくさんいますが、そういう人たちこそ、あわれ、というか、醜いですね。そいつらは、もちろんアニメでは、じこぎマン*5としてやられ役(といってもショッカーの戦闘員レベルの小物キャラですが)で登場してもらいます。
あと、「それいけ!アンガージュマン」には、当然、こちらで紹介した「ろかんタン」も登場します。