今日、かなーーりイヤな事件が起こりました。
夕方、某所に出かけるために家を出たのですが、そのとき、アパートのポストのうえに、昨日までなかった貼り紙があるのに気がつきました。それが、これです。
「関係者以外立ち入り禁止」というのは、まあ集合住宅にはよくある貼紙でしょう。また「ビラ・チラシの投函お断り」というのも、イヤですが、まあここまではぎりぎりガマンできます。
問題はそのとなりです。ここには、読売新聞の7月4日の記事見出しのコピーが、わざわざ貼り付けてあるのです。その見出しはこうです。
急いで出かけなくてはならなかったのですが、もうこれを見て、頭に血が登り、すぐにでもブログに書きたかったです。出先でもずっと気分が悪かったです。
つまりこれ、政治ビラ配りが弾圧された事件の記事なわけです。しかし、実際、うちのアパートのポスト、たしかに、不動産やらレストランやらの広告ビラはかなりひんぱんに入っているものの、政治的なビラなんて、めったに入っていません。
まあそういう意味では、この貼紙を貼った人は、ビラ配りが犯罪化されたこの事件の記事を、単に商業ビラ配りを排除したいために、何も考えずに利用しようとした、という可能性もなくはない。
しかしそれにしたって、この事件の政治性と、みずからの行為の政治性を意識しないその無神経さが、むしょうにはらがたつではないですか。
だいたいですね、この貼紙、ひどいことに、誰が貼ったのか、という主体がどごにも書いていない。まあおそらくアパート管理会社でしょうけどね。自分たちは名乗る必要は当然ない、と思っているらしいところが、また腹がたちます。しかし、住人(すくなくとも私)は、こんな貼紙を貼ってくれと管理会社に頼んだおぼえはとうぜんながら一度もないぞ。
ちなみに、うちのアパートの管理会社、住人に対するサービスは大変よくて、いままで満足していたのですが、超がっかりしました。まあといっても、管理会社としては、これも「サービス」のつもりなんでしょうけど。「ビラ配りは、市議だって書類送検される重罪なんだぞ」とビラ配りの人たちを脅かして、住民を守ってあげようという親切心だと。気の利いたことをした、と思っているのだと思います。
で、うちにかえってきてから、ネットで問題の記事を検索してみたのですが、たぶんこれだというのを見つけました。で、それを見てなおさらあきれてしまいました。
マンション集合ポストに議会報告 共産市議を書類送検
「悪質性ない」管理組合、被害届撤回国分寺市内のマンションの集合ポストに、共産党の同市議が市議団発行の議会報告を入れたところ、小金井署がこの市議を住居侵入の疑いで地検八王子支部に書類送検したことがわかった。マンション管理組合は住民の要望を受け、被害届を同署に提出したものの、「悪質性はない」として取り下げを申し入れた。集合住宅へのビラ配りを巡っては、表現の自由と、住民が平穏に暮らす権利のどちらを優先すべきか。
送検されたのは、幸野統(おさむ)市議(27)。同署によると、幸野市議は5月18日午後5時ごろ、マンション1階玄関ホールの集合ポストに議会報告を配布するため、敷地内に侵入した疑い。
被害届が同22日、マンション管理組合から同署に出され、6月9日、同署は書類送検した。理由について、同署は「配布物の内容は関係ない。警察としては被害届が出されたため、事実関係を確認し、手続きに沿って送検した」と説明する。
このマンションは正面扉を入ったホールに集合ポストがあり、続いてオートロック式の自動ドアがある。集合ポスト近くにはビラ配りを禁止する張り紙があるものの、実際にはほかの政党のビラなども配布されているという。
同党市議団によると、これまでこのマンションでトラブルになったことはなく、当日も投函(とうかん)を目撃した住民の一人から注意を受け、幸野市議は配布をやめたが、住民に納得してもらえなかったため、一緒に近くの交番へ行ったという。
市議団の川合洋行団長は、送検に対して「議員の責務でもある議会報告活動や、住民の知る権利を侵害するものでゆゆしき事態だ」と反発、不起訴処分を求めている。
住民には賛否 管理組合の副理事長によると、管理組合はこの住民の要望を受けて被害届を出したものの、「悪質性はない」などとして6月下旬から地検支部に相談しており、今月3日、正式に被害届の取り下げを申し入れたという。
ただ、マンション住民の間でも様々な意見がある。男性会社員は「ビラやチラシの配布は、ゴミが増えるので迷惑。自分が目撃しても、警察に通報する」と厳しい対応に賛同する。一方、男子学生(23)は「脅迫的な内容であれば通報するけれど、そうでなければわざわざ警察に連れて行くことまではしない。内容によるのではないか」と話している。
一橋大の阪口正二郎教授(憲法学)は「住民はビラを受け取る権利も、受け取らない権利もある。あらゆる種類のチラシやビラの配布を取り締まると、嫌がる人もいる政治的な内容のものだけが結果的に規制されることになってしまうのでは」と危惧(きぐ)している。
(2008年7月4日 読売新聞)
やっぱり「共産市議」だったわけですが、貼紙は、見出しから「共産」という文字を消しているようです。つまり、政治性を十分意識しているわけで、悪質ですね。しかも!この記事を読むと、被害届撤回されてるし。
またこの記事は、アリバイ的に、一応は、ビラ配布規制を危惧する、っていう視点も提示している。ところが、このとおりこの記事は、とにかくビラ配りは「犯罪」なんだ、てことを印象づけるためだけに利用されています。警察とメディアがタッグをくんだプロパガンダ作戦はまんまと成功しています。
まあとにかくね、言っときますけどね、政治ビラはもちろん、広告ビラよりも、ピンクちらしよりも、私にとっては、この貼紙が一番不愉快で迷惑ですからーーっ!!!
ぷんぷん
ちなみに、続報として、この市議は「不起訴」となりました。当然ですが、でもこんな貼紙に事例として使われちゃうぐらいなんだから、書類送検した段階で、「みせしめ」としては効果てきめんだった、てことですね……orz。
東京・国分寺市議の住居侵入:不起訴処分に
東京都国分寺市の幸野統(こうのおさむ)市議が、所属する共産党市議団の「市議会報告」を集合ポストに投函(とうかん)するため、マンションに立ち入ったとして住居侵入容疑で書類送検された問題で、東京地検八王子支部は17日、不起訴処分とした。マンション管理組合が「地元で事を荒立てたくない」と、警視庁小金井署に提出した被害届を取り下げていた。幸野市議は「ビラの配布は憲法が保障する表現の自由の一環であり、当然の結論だ」と話した。【佐藤浩】
毎日新聞 2008年7月17日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2008/07/17/20080717dde041040082000c.html