デモと非デモ

 12月17日、WTO(世界貿易機構)閣僚会議に反対する香港でのデモで、約1000名が香港警察によって大量逮捕・拘束。19日夕方までに大半が釈放されたものの、日本人一人をふくむ14名が勾留延長され、いまも獄中にあるとのこと。「暴力」的なデモだったから逮捕されても仕方ない、と「切断処理」する意見*1もあるようですが、そうした意見がいかに的はずれなものであるかを示す情報が、野原さんhttp://d.hatena.ne.jp/noharra/20051223#p1のところで紹介されいている香港在住フリーランスライターふるまいよしこ氏のレポート(JMMの連載記事)にありあます。

http://ryumurakami.jmm.co.jp/recent.html JMM最新号
連日、香港メディアが本題の閣僚会議の流れよりも何倍も多い紙面を使って流し続けた「デモ隊」「封鎖」「暴力」「武装警察」「ブロック」「催涙ガス」などの刺激的な言葉とは裏腹に、なんとデモ隊見物の市民は日に日に増え続けた。
(中略)
実際に、会議開催前の人々はさして自分とは関係ないものの、予想されていたデモや騒乱にあからさまな嫌悪感を口にしていた。それが幕を開けると、日々、繁華街を練り歩くデモ隊に水や果物を届ける人々の報道が続いたのである。

『経済日報』は「まるで聖地を巡礼するかのような姿に思わず身体が震えた。香港人は他の国のデモ文化を見習うべきだわ」という市民の声を載せ、他のメディアでも「デモ文化」という言葉が使われ始め、「香港の抗議デモも他国の文化をもっと学ぶべきだ」という声もちらほら伝えられるようになった。

 わたしが一番驚いたのは、この香港人たちがデモ文化を語るという「余裕」である。

 非デモな日本では、「デモは私とは関係ないもの」という切断処理的思考の内面化が進行しています。でもそれは、他者の切断処理であると同時に、デモに共感する私たちから私たち自身を切断していることでもあるのではないでしょうか。そう言う意味で、香港の人々のエピソードは非常に重要だと思います。
 以下はAMLで受け取った声明です。

(以下、転送・転載を歓迎します)

すべてのみなさん!

 12月17日、WTO(世界貿易機構)閣僚会議に反対する民衆
デモが香港で大規模に行われ、その中で韓国の農民・労働者を中心
としたメンバー約1000名が香港警察によって不当にも大量逮捕
・拘束を受けました(詳しい経緯については、以下の抗議声明をお
読みください)。

 世界各国からの参加者とともに、かれらと行動をともにしていた
日本からの参加者数名も拘束されました。19日夕方までに大半が
釈放されたものの、大阪で日雇・野宿者運動などに取り組んでいる
私たちの友人、N君をふくむ14名(韓国人11名、中国人1名、
台湾人1名、日本人1名)が勾留延長され、いまも獄中にあります。

 私たちは、世界の至るところで失業と貧困を拡大させ、一握りの
人間に富を集中させるかわりに民衆の生きる権利を否定するWTO
会議に実力でもって反対の声を叩きつけたデモ参加者に対し、心か
らの敬意と連帯を表明します。そして、暴力で持ってかれらの声を
圧殺しようとし、今なお不当な拘束をつづける香港警察・中国当局
に抗議します。

 WTOが進めようとする自由貿易に代表される、国境を越えた弱
肉強食の資本主義の世界化=グローバリゼーションに反対する世界
各地での民衆闘争において、これまで国家・資本の側はつねに暴力
をもって酬いてきました。1999年のシアトルWTO闘争におけ
る大量逮捕と警察の暴力、2001年ジェノバサミット闘争におけ
る警察によるデモ参加者虐殺などをみても明らかです。

 今回、N君は最初名前などを聞かれたのみで、現在にいたるまで
尋問などいっさいなしに拘束され、月曜に突如「勾留延長」を告げ
られたとのことです。この一点だけを取ってみても、香港当局が挙
げている「非合法集結の罪」などは口実にすぎず、デモに対する報
復弾圧であることは明らかです。

 現在、香港では14名の不当逮捕に反対する支援活動が取り組ま
れています。弁護団が結成され、支援者とともに差し入れや面会を
行っています(さいわい、N君は健康に別状なく、元気とのことで
す)。21日は裁判の行われる観糖法院の外で、韓国農民連盟や香
港の団体がともに、3000回の叩頭による抗議行動(頭を地面に
叩きつける)を行いました。22日には繁華街でのキャンドル集会
が持たれ、14名の状況と香港警察への抗議を市民に訴え、街頭で
の救援カンパ活動を展開します。2度目の裁判が行われる23日に
は裁判所前での抗議と14名への激励行動が予定されています。韓
国と台湾においても、すでに支援集会が取り組まれています。

 私たちも、この日本の地からやれることをやっていきたいと思い
ます。14名の即時釈放を中国政府に訴えていくとともに、かれら
が身をもって世界に発した叫びを受け止め、広げていきたいと考え
ます。ともに、行動しましょう。

<行動提起>
以下の抗議文を22日木曜に在大阪中国総領事館に提出、14名の
即時釈放を訴えます。
12月22日(木)15時に領事館前(大阪市西区靫本町3-9-2、
最寄駅:地下鉄阿波座)にお集まりください。


(以下、抗議声明)

駐日中国大使館 特命全権大使 王 毅 殿
駐大阪中国総領事館 総領事 邱 国洪 殿

WTO闘争弾圧救援会

失業と貧困、不平等と戦争を拡大するWTO反対!
日雇・野宿者運動メンバーN君をかえせ!
1149名不当逮捕糾弾!デッチ上げによる14名の起訴・弾圧裁
判を中止せよ!
香港WTO抗議行動への弾圧・起訴攻撃に対する抗議声明

 失業と貧困、不平等と戦争を拡大するWTO(世界貿易機構)閣
僚会議が12月13日から18日まで香港で開かれた。韓国の労働
者・農民をはじめ世界中から香港に集まった民衆は、新自由主義
ローバリゼーションによる「死の行列を止めるために」、17日、
WTO閣僚会議の中止を求める集会を開き、会議場のあるコンベン
ション・センターに向けて抗議デモを行なっていた。これに対して
香港警察は不当にも、催涙弾、電気棍棒、ゴム銃弾でデモ隊に襲い
かかり、多数のデモ参加者を負傷させ、暴力的に強制解散させよう
とした。韓国民衆闘争団はこの暴挙に抗議し、貧しき人びとを翻弄
し命を奪うWTOを弾劾する1000名規模の抗議集会をコンベン
ション・センター前で行なった。この抗議集会には、数年来、韓国
の失業・野宿者運動や日雇労働運動との共同闘争を進めてきた日本
の日雇・野宿者運動のメンバーN君も報道の任務を担いながら参加
していた。これに対して警察当局は集会周辺の道路を完全封鎖した
上、集会参加者を10時間に渡って監禁状態に追い込み、18日未
明から朝10時頃にかけて周辺で見守っていた人びとも含めてまっ
たく不当にも全員を逮捕・連行した。拘束されたほとんどの人びと
は当然ながら順次釈放されたが、香港の捜査当局は、N君を含む1
4名を「非合法集結の罪」で、19日、拘留延長を打ちおろし、2
3日に開かれる法廷で起訴するとしている。

 韓国民衆闘争団をはじめとするWTO抗議行動は、WTO閣僚会
議の「合意」の如何によって参加者自らとその仲間たちのまさに生
き死にがかかっているが故に、根源的・徹底的な闘争である。だか
らこそ、様々な創意工夫をこらした闘いは香港市民の喝采と支持を
浴びてきた。私たちはまず、これらの一連の反WTO行動を断固支
持する。新自由主義グローバリゼーションによって拡大する「棄民
化」を強いられ社会の底辺で日々困窮するこれらの人びとの立ち上
がりと国境を越えた結びつきによって、必ず希望は取り戻されるだ
ろうし、私たちはいかなる弾圧をも跳ねのけて前進することを決し
てやめない。私たちの前進を阻み、人権侵害や弾圧でもって応えよ
うとする香港当局に対して怒りをもって弾劾し、以下のことをただ
ちに実行することを要求する。

1.逮捕・拘留延長を強いられたN君と13名の仲間を解放せよ。
2.デッチ上げによる起訴・弾圧裁判を今すぐ中止せよ。
3.12月17〜18日に不当逮捕した1149名の仲間に対して
謝罪せよ。

2005年12月22日

抗議声明への連名賛同のお願い

 私たちは、WTOに対してまったく正当な抗議行動を展開しなが
ら弾圧されたことに対して、容認できません。あの抗議行動は5%
のためのWTOではなく、「もう一つの世界を」求める95%の民
衆の願いを体現する行動であったと確信しています。その行動と要
求が新自由主義の根幹を揺るがすものであったが故の報復弾圧であ
るだろうと感じています。そして、このような不当逮捕・弾圧を拡
げさせないためにも、多くの方にご支援・ご注目と、可能なら以下
の抗議声明への賛同連名をお願いします。(賛同していただける方
はお名前・団体名と肩書きをお書き添えの上、FAXまたはメール
でお送り下さい。お名前・団体名はビラなどで公表させていただき
ます)

※第一次集約は、12月22日午前11時とさせていただきます。
※それ以後に届いた分も、ビラなどに順次追加していきます。

賛同団体(12月22日午前1時/順不同)

釜ヶ崎トロールの会/長居公園仲間の会/西成公園よろず相談所
うつぼ公園自治会/沖日労と連帯する会(釜ヶ崎)/高齢者特別
就労組合準備会/布施夜回り準備会/渋谷・野宿者の生活と居住権
をかちとる自由連合/野宿労働者の人権を守る会/「持たざる者」
の関西連帯行動/釜ヶ崎地域合同労組/釜ヶ崎炊き出しの会/釜ヶ
崎医療連絡会議/失業と野宿を考える実行委員会/釜ヶ崎連帯委員
会/在日アジア労働者と共に闘う会/山谷労働者福祉会館活動委員
会/グローバリゼーションを考える日雇・野宿者運動準備会/日雇
全協・山谷争議団/関西非正規等労働組合(ユニオンぼちぼち)

WTO闘争弾圧救援会

連絡先:
06-6572-9441(FAX)
06-6572-9440(TEL)
e-mail: people@jimmin.com
郵便口座:00950-4-88555(人民新聞社名義)
※救援カンパは「WTO」などと明記して下さい。

*1:ここでは説明できませんが、サルトルはこういうのを「集列的思考」と呼びます。