2010年3月22日

 12年前の今日2010年3月22日、日本人の妻と日本で暮らしていたガーナ人スラジュさんは強制送還の途中空港で入管職員の制圧を受け死亡しました(享年45歳)。入管職員は手錠・足錠をつけタオルで猿ぐつわをし、6人がかりで抱え上げ飛行機に乗せ無抵抗の彼を力の限り押さえつけ、前かがみにさせ横から首を倒しました。
 その後提起された国賠訴訟の弁護団に参加した谷口太規弁護士のコラムから抜粋します。

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 国は、スラジュさんの死は、スラジュさんの心臓にあった極めて特殊な腫瘍による突然死だと主張した。
 そんなバカな、である。手足を拘束し、何人もの男性職員が力の限り制圧しただけでなく、首を強く押さえつける中で息絶えているというのに、まさにその瞬間に、それまで問題なかった心臓の奇病が現実化して亡くなった、という主張である。そんな常識に反する奇想天外のストーリーを一体誰が信じるだろうか、私たちは国が提出した書面を見てそう思った。
(…)3年にわたる審理、10人に及ぶ証人尋問を経て、一審は国の責任を認める判決を出した。苦労はしたが、正義はかなえられた、かに見えた。
 しかし、控訴審になって、国はさらに多くの医師を連れてきた。まるで、日本のほとんどの法医学者が国に協力しているかのようであった。国は多くの予算をかけて研究者を雇い、再現実験までをやり、実験室の結果を持って問題ない制圧であったと主張した。一審で出せるだけの全てを出していた私たちはそれ以上の主張をすることが難しかった。
 控訴審は制圧行為をした入管職員に直接話を聞くことなく、一審判決を覆した。基本法律論のみを扱う最高裁で事実認定を争うのはほぼ不可能に近い。飛行機の座席で崩れ落ちたスラジュさんは、心臓の奇病による死と片付けられ、入管が責任を問われることはなかった。

#0322NeverForgetSuraj