殺人レストランと「入管」

 レストランの看板を掲げているので、食事しようと店に入ると、身ぐるみ剥がれて殺されてしまうという、宮沢賢治の「注文の多い料理店」のような、「殺人レストラン」があったとしましょう。料理を食べに来たら、料理をされてしまう、おそろしい店ですが、看板は「レストラン」となってます。
 店に入ると、ウェイターがいます。注文をとりにくるかもしれません。でもほんとはそれはウェイターではありません。あえて言うなら、「注文をとりにきたふりをする殺人鬼」です。店の奥には料理人がいます。料理を作っているように見えるかもしれません。でもそれは、料理人ではなく、「料理を作っているふりをする殺人鬼」です。店の掃除をしている人がいました。でもそれは、清掃員ではなく、「掃除をしているふりをする殺人鬼」です。ホラー映画ですね。

 入管に医者がいたそうです。医師免許があり、診察もしていたそうです。しかしその「診察」とは、被収容者の患者に「そこに胆のうはない」「あなたの胆石どうでもいい」などと言うようなもの*1だったそうです。またこの医者は、診察中に「不法滞在なんだから早く帰りなさい」などと言っていたそうです*2。そう、恐ろしいですね。これは、医者ではなく、いわば「診察しているふりをする入管」だったのです*3
 入管の難民認定の仕事をする難民審査参与員の柳瀬という人がいたそうです。その人は国会で「難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」と言っていたそうなのですが、2022年は1231件、2021年も1378件も「審査」していて、計算すると1件あたり6分程度しか審査に時間をかけていなかったことになるそうです*4。さらにこの人は、「何とか今の法案は通してもらわないと」「入管庁をプッシュすることはいくらでもする」と発言していたことが明らかになりました。そう、恐ろしいですね。これは、難民審査をする人ではなく、いわば「難民審査するふりをする入管」だったのです。
 いや待てよ、この「難民審査参与員」は、外部の難民専門家の顔をしながら実際は入管、だったわけですが、難民申請した人が最初に受ける難民認定の一次審査を担当するのは、入管職員なのでした…。もうウェイターの服装とかすら着てない。レストランに入ったら、普通に殺人鬼がピストル持って注文をとりに来る?みたいな倒錯した世界です。
 そんな恐ろしいレストランで起こった様々な事件が明るみに出て、問題になりました。そしたら、普通に考えて、そんな店は閉店、解体、となるでしょう。ところがなんと、殺人レストランはいまだに営業を続けていて、店長も店員も普通に「仕事」を続けているのだそうです。恐ろしい!それどころか、殺人店長がのこのこ出てきて、「不幸な事件がありましたが、今後そのような殺人事件がおこらないように厳しく対策をしてまいります」と記者会見したそうです。殺人を仕事?にしている人が、殺人が起こらないように仕事をしてまいります、て笑っちゃいます。まあ、実際は料理なんかしてない殺人レストランの店長が、レストランの店長のフリをして「今後も美味しい料理を提供するように努力してまいります」と言っているようなもの、と言ったほうが近いですかね。
 さらにさらに、この殺人レストランがある国は、「レストラン殺人が起こらないように法律を変えます」と言い始めましたが、法律のなかみを見ると、なんと、「もっと殺人をしやすくする法律」でした。この法律の国会審議中にも、いろいろな、いろいろな、いろいろな問題が噴出してきて、もう審議どころじゃないでしょう、廃案にするしかないでしょう、という状況になっているにもかかわらず、強行採決?するとか言うとるらしいです。
 こんな、ホラー映画よりホラーな法律、廃案一択ですね。直近のアクションは以下のサイトなどにまとめられています。

www.openthegateforall.org

*1:https://www.sankei.com/article/20230530-22KOPTIRERNRZM643YMMI2YJT4/
大阪出入管の医師が酒に酔った状態で外国人収容者を診察していた疑いについての弁護士らのグループが2023年5月30日大阪市内で開いた記者会見を伝える産経新聞の記事「「入管は隠していた」 収容者への酒酔い診察疑いを弁護士ら批判」(2023年5月30日)より。

「〔2022年度から勤務していたとみられるこの医師は〕支援者による収容者への聞き取り調査で問題が浮上。複数の収容者から「『不法滞在なんだから早く帰りなさい』といわれ、まともな医療をしてくれない」などと問題視する声が上がっていた。
胆石と診断されていたあるコロンビア人女性は、この医師に右腹部の痛みを訴えると「そこに胆のうはない」「あなたの胆石どうでもいい」などといわれたという。女性は会見にリモート参加し「(お酒の)においがした。一番悪い先生」と話した。」

*2:これについては、ブログ「宇宙広場で考える」の、「大阪入管常勤医「不法滞在なんだから早く帰りなさい」発言の考察」https://nobunagai.blogspot.com/2023/06/blog-post.html?fbclid=IwAR3DBayTu0Yua8eCfDsdcWreIcko8Oal5ZWF-UuxSI9LwH-AK7Piq86DQGc

を参照してください。

*3:この医師は常勤医として未だにはたらいており、給与も支給され、処分もされていないが、入管が問題を把握した後、2023年1月20日以降業務から外れていた。法務省も2月には事態を把握していた。にも関わらず、入管庁が【4月】に出した「改善策の取組状況」という報告書では、いけしゃあしゃあと改善策として「大阪に常勤医師1人(令和4年7月)」などと書いていたそうだ。法相も、4月19日の衆院法務委で「常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進などが表れている」など入管改革をアピールしていたという。

*4:ただ、柳瀬氏は「(応援含め)月に6〜8人、年に九十数名、100人に届かないくらいの申請者に会っている」と、国会発言と矛盾したことも言っているという。「「面談は年90人~100人」…16年間2000人の説明と食い違う音声か 柳瀬氏発言巡り弁護士らが入手」2023年6月3日東京新聞

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