問題はなかった

 5年前の今日2017年3月25日未明、東日本入国管理センターに収容されていたベトナム人男性(47)の死亡が確認されました。死因はくも膜下出血でした。18日から激しい痛みを訴え続けていましたが、外部病院には受診させず一週間放置されました。「痛い、痛い」と訴える男性に職員は「静かにしろ」と言い放っていました。ウィシュマさんが死亡する4年前のことです。
 この間なされた医療措置は21日の所内でのX線撮影と痛み止め薬処方のみ。当時同ブロックの被収容者によると、18日から痛みを訴えていた男性は、24日も11時から痛い痛いと泣き叫んでいましたが、20時ごろ静かになったそうです。職員は22時に男性の反応がないことを確認していましたが、それでも救急車を呼ばず、一旦居室を立ち去っています。やっと病院に搬送されたのは数時間後の25日未明。男性が運ばれていく姿を目撃した同ブロックの被収容者は、男性の体が硬直しているように見えたそうです。入管の発表によると2時20分ごろ病院で死亡が確認されています。以上のことから、本当の死亡時刻は24日20時だった可能性があります。
 牛久センターの北村晃彦所長(当時)は、死亡直後に「現時点で処遇に問題はなかった」とコメントしています。6月に「東洋経済」誌が当時の対応について改めて入管に聞いたところ「特段問題はなかった」と回答しています。自分の施設で人が死亡していつもこのような対応をするのが入管なのです!同年12月に発表の法務省内部調査によると、18日から頭痛、意識もうろう、失禁などの症状を職員が確認していました。21日に診察した所内非常勤医は「筋緊張性頭痛」診断。頭痛薬の処方でした。報告書では、外部の脳神経外科医が「頭痛の訴えを受けた段階で専門的な検査をすれば、くも膜下出血を確認できた」と指摘しています。だが薬の服用で一時回復したことなどから、報告書は「重篤な病気と認識するのは難しかった」と結論しています。報告書で入管は「事実を重く受け止め、医療体制を整えていきたい」としていました。……そして4年後、ウィシュマさんが死亡しました。いままた入管は「医療体制を整えていきたい」というようなことを言っていますね。白々しいにもほどがあります。問題は「医療体制の不備」などではないのです。お前たちを治療などしないぞ、死んでもしかたないんだぞ、ということを被収容者に見せつけ、心を挫いて帰国させる「体制」を意図的に作っているのです。まさに国連に何度も指摘されているように「拷問」以外の何ものでもありません。こうした送還一本やりの入管の方針そのもの、入管そのものが問題なのです。
参照
入管の「内部調査」がどのようなものかはこちらの動画をご覧ください https://youtu.be/MATCwQUOV98