応援練習のおもひで

一年以上前に中断したままの「O荘の物語」は近日中に続きを書きたいと思っているが、今回は、高校時代(1981年〜83年)のことを書いてみよう。私はY梨県K府の県立高校に通っていた。Y梨県では当時総合選抜制度というシステムがあって、普通科高校は、共通テストを受けた合格者が、成績上位順から市内の4校に順番に振り分けられるという風になっていた。私が通ったのもその4校のうちの一つ。
80年代のすさまじい愛知の管理教育の様子が話題になっているがhttp://web.archive.org/web/20020105160847/park.itc.u-tokyo.ac.jp/kiss-sr/~naito/newpage8.htm私の高校ではここまでのことは全くなかった。が、わけのわからない校則とか、そういうのはあった。後に教育実習で都立高校に行ったときは、都立高校のあまりの自由さにびっくりしたものだ。
わけのわからない団体行動で当時一番いやだったのは、応援練習、というやつだった。応援練習というのは、全校生徒が屋上に集められ、高校野球の応援の仕方を応援団によって指導される、というものだ。年に何回かあったように思う。野球部は全然強くなかったが(もちろん甲子園なんか行ったことない)地方予選大会の応援に行くことは強制だったように思う。そして、この応援練習も出席がぎむづけられていた。しかしこれ、今思い出すとなかなか笑えるので紹介する。
まず、屋上に全校生徒が整列させられる。一番前には、応援団のみなさんが、こちらを向いて恐ろしい形相で並んでいる。スソの長ーいガクラン(長ラン)を着て、タックがたくさん入ったダボダボのズボン(ボンタン)額は剃り込みを入れている。眉毛とかそっちゃってるような人もいる。いわゆる当時の「ツッパリ」スタイルである。白い手袋をして腰に手をあてている。
儀式は、挨拶から始まる。詳細は忘れたが、とにかく、いっせいに「ウーッス!」と叫ばされる。すると、団長が「ちっくーい!!」と絶叫する。「ちっくい」とは、Y梨弁で、「小さい」という意味。つまり、「声が小さいぞ(もっと声を出せ)!」という意味。

「ウーッス」「「ちっくーい!!」「ウーッス!」「ちっくーい!!」「ウーッス!!!」「ちっくーい!!」

というのが、団長様が満足するまで続けられる。次に、団長はこのように掛け声をかける。

ダンキに向かって〜〜えッ!!礼〜〜ッ!!

団旗というのは、応援団の旗である。これは、大きな旗で、腰につけた専用の支え具を使って、団員の方が、反り返りながら踏ん張って支えている。風の強い日とか大変だったと思う。そんなものに、応援団員でもないのに何で礼をしなくてはならないのかわからなかったが、この掛け声があると、ウーッスとかいいながら、90度腰を曲げて最敬礼しなければならない。曲げ方が足りないと、巡回中の団員の方に怒られる。敬礼中に、太鼓が、ドンドンドンドンとならされる。で、次に礼をさせられるのは、何とその太鼓に対してである。この太鼓は、確かに立派なでかい和太鼓ではあったが、なにやら応援団にとっては神聖なものであるらしかった。これまたなぜ団員でもないのに(略)とは思ったが、とにかく

タイコに向かって〜〜えッ!!礼〜〜ッ!!!
ウ〜〜ッス!!
ドンドンドンドン

という風にオタイコさまに対する礼がおこなわれる。次は、校歌とか応援歌とかの練習である。まっすぐにこぶしを突き出したままの格好で、校歌と応援歌を絶唱させられる。その間、団員の方は、歌に合わせて空手の型のような動きのフリをする。一般生徒もこの型の一部をやらされたと思う。
非常によく覚えているのだが、この歌の間、団員の方々は、生徒の間を巡回して、服装や髪の毛のチェックをするのである(ちなみに制服は、男子はガクラン、女子は紺のブレザー+スカートである)。校則に反した服装や髪型の生徒を見つけると、注意する。教師に報告していたかどうかは覚えていない。ちなみに、何人かの教師たちは後ろの方で腕組みをしてこれらの眺めていたように思う。ウーッスとかはやっていなかったと思う(笑)
で、こういう風紀チェックをする団員の方々というのは、日ごろは、教師から眼をつけられ、うるさく服装や素行などを注意されているツッパリの方々なのだが、この応援練習の時だけは管理側に回るのである。ま、とにかく応援団というのは、いわば教師公認のツッパリ文化であり、応援練習というのはそれがまた公式行事としておおっぴらに披露できる晴れ舞台ということで、団員の方々はとても張り切っていたように思う。
あと、面白いのは、応援練習において、ツッパリ文化におけるジェンダーが露呈する場面である。応援団には女子セクションのようなものもあって、そこに所属するのは女子のツッパリの方々、いわゆるスケバンの方々である。当時のスケバンの方々のスタイルというのは、引きずるような長〜いスカートに、紫のハチマキ。髪型は聖子ちゃん。
で、応援練習には、男子の応援団員が主役の第一部が終わったあとに、おまけっぽく、女子の応援団員による第二部があった。それは何をするかというと、女子の応援団員が、応援の踊りを披露するのである。上のようなスタイルの女子応援団員が前に出てきて、紫の扇子(女子ツッパリ文化はとにかく紫なんだよね、どういうわけか)を持って、日本舞踊のようななんなのかよくわからない舞を舞う。セリフが付いていたのだが、ほとんど忘れてしまったものの、以下のようなフレーズがあったことだけは鮮明に覚えている。

グランドにぃ、勝利の花を、咲かせましょう〜

五七五になってますね。
あんまりイヤだったのでサボったこともある。美術室の控え室(美術部だったので)に隠れていた。