ジョルジュ・ソレル『暴力論』(1908)について

秋水の「私の思想の変化」の一年後、1908年年に出版されたジョルジュ・ソレルの有名な本『暴力論』(直訳だと『暴力についての考察』)の超部分訳を、何回かに分けて載せます。ソレルについての辞書的な記述としては

Sorel,Georges 1847〜1922
フランスの社会思想家。25年間政府の土木技師として働いた後、プルードンマルクスの影響を受け著述活動を始める。政党制議会主義を否定し、社会革命はゼネラル・ストライキなどの労働者の直接行動によって達成されるとする革命的サンディカリスムに共感。主著『暴力論』においてその思想を理論化した。同書では社会革命における暴力の倫理性が主張されたが、その思想はムッソリーニなどのファシストに利用されることにもなった。

という感じになります。(Wikipediaはこうなっている)ソレルの『暴力論』はベンヤミンの「暴力批判論」にも大きな影響を与えました。ベンヤミンの本では、『暴力論』の第4章と第5章から数箇所引用されています。というわけで『暴力論』第4章から訳し始めましたが、第4章第1節まで訳したところで、この調子ではきりがない、ということに気づいたので、残りは、ベンヤミンが引用した箇所の周辺だけ訳すことにします。
テクストは、
http://kropot.free.fr/Sorel-refviolence-001.htm(html、注なし)
http://classiques.uqac.ca/classiques/sorel_georges/reflexions_violence/reflexions_violence.html(MSワード)
にある電子テクストを用いました。
この本の翻訳はすでに1933年に、岩波文庫から木下半治氏の訳で出版されています(現在は絶版)。
今回の翻訳では木下氏の既訳を大いに参考にさせていただきました(というか木下訳を読まないとわからないところが多数ありましたorz)。木下訳は、大変正確ですばらしいものだと思います。ただ、かなり直訳体なので、原語を参照せずに読むと読みにくいかもしれません。私の今回の訳は訳文だけで読めるように心がけましたがうまくいっているかどうかは心もとありません。
内容についてですが、議会派社会主義者を切って捨てる様は痛快ともいえますが、やはり、全体的に漂うマッチョな雰囲気に違和感を感じる人も多いかもしれません。
ちなみに、サルトルはどこかで、ソレルのことをボロクソに言っていたと思いますが、サルトルの直接行動論について、ソレルと対比することでわかってくることもおそらくずいぶんあると思います。
〔 〕内は訳者による補足です。注は、特に記さないかぎり原注です。
最後に、私が持っている訳本は、古本屋で入手したのですが、初版本で、元号でいえば昭和八年発行です。というわけで、かなり伏字が入っています。が、今回くわしく見てみると、この伏字っていうのは何が伏字になるのかまったく統一が取れていない感じで、いったい何の意味があるのか、と思いました。こんな感じです。