説得力

 先週、某大学の昼休み、図書館の雑誌コーナーで雑誌を見ていたら、満面の笑顔で両手を広げた、明治大学教授齋藤孝氏の写真が表紙の雑誌が目に入りました。普段は読まないその雑誌(『週間ダイヤモンド』)を、思わず手にとってパラパラと読んでみました。私は齋藤孝教授の本は実は一冊も読んだことがないのですが、なかなか興味深かったです。日記で話題にしようと思って帰りに本屋で探したのですが、一週前の号だったようで、店頭には新しい号しかありませんでした。というわけで、今週また某大学の雑誌コーナーに行って、ノートパソコンでメモを取ったので*1、紹介させていただきます。
 で、『週間ダイヤモンド』のその号(6月11日号)は、「特集 上司・部下・お客をうなずかせる『話し方』説得力」ということで、そのパート1は、齋藤孝氏による「説得力」の指南です。この齋藤氏の文章に言及している文章はすでにネット上にいくつかありますので、興味ある方はご覧下さい。ここでは、私が興味深いと思った箇所をいくつか紹介させていただきます。
 齋藤氏の文章はこう始まります。

まず言っておこう。説得力とは、論理力と似て非なるものである。(p.30)

 齋藤氏は、ディベート形式のトレーニングでいくら論理力を鍛えても、説得力とは結びつかないと言います。齋藤氏は「論理力のあるほうだと自負している」そうなのですが、ディベートで侃々諤々やり合っても後腐れのない風土があるアメリカとは違って、日本では「論理は現実を動かす力にはなりにくい」と言います。そう言う氏が次々と指南してくれる「説得の技術」は、たとえばこのようなものです。

話すときの印象も大事だ。当人が自信と希望に溢れ、太陽のように輝いていないと説得力はない。(p.34)

 なるほど……それが、表紙のあのありえないような笑顔だったのですね。

 そのためには当人がワクワクしていないとダメ。私がCMで肩胛骨をぐるぐる回しているのは、なにかが自分のなかにわき上がっているという意味。噴水や温泉、石油がわき出ているイメージ。こういう動きを常にやっていると、どんどん力がわいてくるのである。(同)

 なるほど……たしかに力がどんどんわいてきそうな気がします!?
 さらに、氏は「スポーツのさわやかさを仕事のなかに取り入れる」ことを提唱しています。

私はよく会議で”ハイタッチ”をする。サラリーマンの心には常に、嫉妬と自己保身が潜んでいる。(……)そのセコい嫉妬心の芽を、拍手とハイタッチで自ら摘んでいくのだ。そんなハイテンションな身体感覚を得るトレーニング法として最適なのは「ハイテンション英語プレゼン」である。(同)

 なるほど……とってもさわやかな会議だなあ!?
 さて、このように「説得力」の指南を続けた氏が、「最後に、いざというときのプレゼンで最大の説得力を発揮するアイテムをお教えしよう」といって紹介するとっておきの技が「色紙力」です。

色紙に書くとなると、まともな人間なら誰でも緊張する。自分の言葉にそれほどの価値はあるのだろうかという不安に襲われる。(……)だからこそ、色紙に書かれると勝負を賭けているとすぐにわかる。文字の持つ呪術力が最大限に引き出され、”言霊化”している。ワープロ文字の企画書に比べ、説得力が倍加するのである。
 なにより会社の備品として色紙を置いているところなどないから、身銭を切ったという姿勢もアピールできるだろう。
 「色紙力」――ぜひ、お試しあれ。

 「身銭を切る感覚」というのも氏が強調していることで、「『自費で、そこまでやっちゃったの』ということが説得力につながる(p.33)」ということです。私などは、色紙一枚で身銭を切っていると強調などしたら、逆にセコイやつだと思われるのではないか、と思ってしまいますが……それはまだまだ私の修行が足りないということなのでしょう。

*1:そこまでするか、という気がわれながらしないではないのだけど……。