ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』第1話 - 猿虎日記
ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』第2話 - 猿虎日記
続きです。今回も原作に非常に忠実でした。やはりエピソードの順序の入れ替えは多少ありましたが、セリフを含めて細部までかなり原作通り。
今回、原作第2巻の終わりごろに出てくる、「心麦が水道を流しっぱなしに→松風が「今日はもう帰りな」と言う→心麦が京子に会う→心麦が伯母の夏美の家に行く」という部分が冒頭にありました。原作から変わっていたのは、心麦が京子に会う場面です。原作では、街なかで心麦を見かけた京子が心麦に声をかけ、2人は立ち話をしてすぐ別れるのですが、ドラマでは、川岸でたたずむ心麦に京子が声をかけ、2人でカフェに行ってケーキを食べながら話をするシーンとなっています。その他はまったく原作通り。その後、ドラマでは神井が心麦に声をかけるシーンが入っていましたが、ここは原作にありません。
原作第2巻の終わりは神井に提供された音声を松風が聞くシーン。原作では松風が夜1人で聞いていましたが、ドラマでは松風は夕方プリンを食べながら聞いていて、横にいる波佐見も一緒に聞いています。
原作第3巻冒頭にある、松風が染田のラーメン屋に行くシーンは、ドラマでもほぼ原作通りですが、原作と違って松風が染田のラーメン屋に行くのは二回目ですね。その後場面が変わって警察署内での赤沢と秋貞の会話のシーンもほぼ原作通りではあるのですが、今回ちょっと思ったのは、赤沢のキャラも原作とかなり違ってますね。原作の赤沢は、山下春生と同年代で、やせた老獪な男、という感じなのですが、ドラマの赤沢は、原作よりは若く見える、がっちりした体格の肉体派という感じの男になっています。と思ったら、赤沢役の藤本隆宏さんて、元競泳選手なんですね。どおりで肉体派に見えるわけだ……。
ところで、このシーン、染田のサイン偽造の過去について話題が出ます。原作では秋貞ではなく別の警官が話すのですが、そのセリフは以下です。
染田は以前…野球選手のサインを偽造したユニフォームの販売をして逮捕され、同種罰金前科があったために起訴…ヤサにガサが入った際にシャブも見つかって、2年の実刑になってましたよね
偽造サインのユニフォーム販売だけで起訴されたわけではない、という点をきっちり説明している点がさすがです。しかしこのセリフ、ドラマでは「同種罰金前科があったために起訴」の部分が削除されていました。煩雑になるし削除されたのもしかたないとは思いますがちょっと残念ですね。それはともかく、このシーンで、染田がサインを偽装したユニフォームの写真が画面に映りました。ドラマについて考察しているこちらのYouTubeチャンネル→(https://youtu.be/4X8ooy28DSU?si=PZRwCpZD2A782CwE)を視聴していて気がついたのですが、このユニフォーム、「NANSHIN 16」のタテジマのユニフォームでした。同YouTubeチャンネルで語られているように、これが「HANSHIN」であれば、染田が逮捕された当時(1991年)阪神タイガースの背番号16番の選手は、岡田彰布です。漫画原作はどうなっていただろうか、と見てみたら、これが違っていました。背番号16は同じなのですが、番号の上部の文字が、ドラマと違って選手名の「TAKAHASHI」(Tは吹き出しに隠れてますが)となっています。1991年で高橋といえば、カープで活躍した高橋慶彦が阪神に移籍した年です(そしてほとんど活躍できず翌年現役引退します)。しかし高橋慶彦の背番号は2です。というわけで、漫画版の「TAKAHASHI 16」は、おそらくとくにモデルのいない架空の選手だと思います。ちなみに高橋という野球選手は多数いますが、漫画版のサイン、ネット検索したところ、高橋慶彦とも高橋由伸とも高橋尚成とも高橋周平とも高橋遥人とも高橋奎二とも違います。誰のサインをもとにしているのでしょうか。ドラマ版のサインも岡田彰布のサインとは違います。これも誰のサインをもとにしているのでしょうね……。

ドラマでは、このあと、原作第2巻の真ん中辺に出てきた、阿南検事と赤沢の会話シーン(阿南検事の初登場シーン)が来ました。ドラマで阿南検事がなかなか出てこないのでまさかこのまま出てこないとか、と思ったらそんなことはないですね(キャスト一覧にも出てました)。このシーン、セリフもほぼ原作通りでしたが、阿南役の瀧内公美さんがすごかった……。あまりに漫画通りで、漫画から出てきたのか、というぐらいでした。セリフ、原作通りと言いましたが、一箇所違っている点があって、原作の「被疑者」を「容疑者」に変えていました。両者は同じ意味で、「容疑者」はマスコミなどで使われる通称、ということです。したがって、実際には検事と警官の会話で「容疑者」という単語が使われることはないはずで、ここは原作と違ってリアリティが失われている、と言えるのではないでしょうか。そういえば、前回「黙秘権は被疑者にとって唯一にして最強の武器である」という松風のセリフが原作どおりだった、と書いたのですが、もしや、と思ってドラマ第2話を見直してみたところ、なんと、ここも「黙秘権は容疑者にとって唯一にして最強の武器である」に変わっていました!気が付かなかった……。ドラマの場合一般へのわかりやすさを考えて「被疑者」を「容疑者」に変えることにしたのでしょうか。ただ、「被疑者」という単語、そこまで一般に知られていない単語とはいえないと思うので、ここは「被疑者」のままでもよかったように思いますがどうなんでしょうね*1。しかし、これは細かいことであって、最初にも述べたように、ドラマは全体的に非常に原作に忠実です。
ドラマではその少しあとにちくわカレーのシーンがあります。事務所で松風がカレーを作っているところに波佐見がやってくるシーン、2人の会話の内容など原作にないセリフがかなり加わっていたとはいえ、驚いたのが、波佐見の謎の鼻歌までもがそのまま採用されていたところです。ただし、原作の「朝はだるい♪」が、「午後はだるい♪」に変わっていました。こ、こまかい(笑)ドラマでは、原作のチョコレートのエピソードは省略されていましたが、少し似ているともいえるちくわカレーのエピソードはほぼそのまま出てきました(これまた細かいですが、コンビニでちくわが間違って温められた、という部分は煩雑すぎるからか割愛されていましたね)。ただ、やはりドラマの心麦は、このシーンでも原作と違って比較的落ち着いていました。
*1:と思いましたが、「容疑者」という言葉がマスコミで使われるようになったのは、「被疑者(ひぎしゃ)」が「被害者(ひがいしゃ)」と発音が似ているので混同を避けるため、と書いてあるところもあります。テレビドラマでも「被疑者」ではなく「容疑者」を使うというルールがあったりするのかもしれないですね。しかし、「ヤサ」「ガサ」「シャブ」はそのまま使われているわけで、ややアンバランスに感じます。