ファクトチェックのファクトチェック

このHUFFPOSTの記事

www.huffingtonpost.jp


は「ファクトチェック」の体で、「ネットで拡散した図が、ALPSを通さず汚染水がそのまま放出されるかのような図になっているから誤り」と主張しているが、しまいには、イラストの出処が中国ということをつきとめた、とヘイトスピーチまがいのことまで言い出している(だからなんだというのか)。

 さて、どうだろうか。問題のイラストはこれである。

 

冷却水と汚染水の違い

冷却水と汚染水の違い

しかし、このイラストは「今回の水はデブリに触れ、いろいろな放射性物質が含まれているから、正常な原発からの水とは違う」ということ

今回の水はデブリに触れ、いろいろな放射性物質が含まれているから、正常な原発からの水とは違う

https://foejapan.org/issue/20230801/13668/ より

を示す図なのだから、別に誤りではない。ファクトチェックのファクトチェックが必要だ。
ALPSを通したからといって「ALPSを通した、デブリに触れいろいろな放射性物質が含まれている水」であるという事実には変わりない。このHUFFPOSTの記事はトリチウム以外のことはなんにも言ってないし。
 「同じ麺といってもうどんの原材料は小麦でフォーの原材料は米なので根本的に異なります」と、小麦と米のイラストを書いたら、「米を加熱処理せずにそのまま食べるかのようなイラストだから誤り」と難癖をつけるようなものかと。
 というか、そもそもだけど、件のイラストには、どこにも「海」は描かれていない。「そのまま海に放出されるようなイラスト」という表現自体が決めつけでは。

政府東電と毎日のかれいなるチームプレー

 毎日新聞2023年8月22日の「処理水放出、科学的根拠だけでいいのか 二極化する原子力の賛否」
 という記事は、一見、結論として政府と東電を(も)批判しているような見かけになっている。だが「科学的に見れば今すぐ放出しても問題はないが」などと書いている噴飯ものの記事である。この記事の有料部分に

毎日新聞2023年8月22日
 という写真があるのだが、ここにうつっている測定器日立TCS-172は、γ線の空間線量率を計測するもので、液体のトリチウムβ線は測れない。そのことはおしどりマコ・ケンさんがすでに2020年に以下の記事で指摘している。
 上の記事でマコ・ケンさんは「毎日新聞まで、この測定の詐欺にひっかかっていた」と嘆いているが、今回毎日新聞はこのときと全く同じ写真を使いまわしているのだ。「科学的に見れば」が聞いて呆れる。
  毎日の記事は「丁寧な説明を怠っている政府と東電も問題だ」のような批判的記事の見かけをとりながら、大前提の部分で政府と東電の非科学的極まりない詐欺に加担している。
 まあ結局、取り調べで、まず強面の刑事が「やってんだろコラ吐け!」とか恫喝して、そのあと「まあまあ、そんな言い方するなよ。カツ丼でも食うか?…ところでやったんだろ?」みたいな刑事が出てくるんだけど、このカツ丼刑事の役割が、朝日とか毎日なんだよね。これはやねごんさんが昔書いてたことなんだけど。と思ったけど、カツ丼について書いているのは見つからなかった。内容としてはこれとかかな。

lever-building.hatenadiary.org

クジャクのダンス、誰が見た?

 twitterで誰かが勧めていて読みはじめた漫画『クジャクのダンス、誰が見た?』の最近出た第三巻を読了。
 冤罪事件をテーマにしていて、ストーリーは、以前話題になったドラマ『エルピス』に少し似ている。『エルピス』ではジャーナリストが主人公で、六角精児演じる弁護士はほとんど空気だったけど(観ながら「なぜそこで弁護士に連絡しない?!」と何度も思った)この漫画は、弁護士が主要キャラクターとして出てくる。第三巻まで読んだところで、検察が悪、という感じになってきました(これもある意味ネタバレかな?)今後どうなるかはわからないけど。
 この漫画は、市川寛さんという弁護士が法律監修をしているのだけど、市川寛さんは元検事。私は知らなかったのですが、2001年、佐賀地検在職中にある事件の被疑者に不当な取調べを行ったことについて法廷で証言し、大きく報道されたそうです。その後、被告人は無罪となり、市川さんは検事を辞職。弁護士に転身し、以後、検察や警察の取り調べの問題点について批判的な立場で発言しているようです。
  市川さんのブログによると、漫画に登場する弁護士松風義輝(まつかぜ・よしてる)の「個人的には、『万が一逮捕されたら、弁護士が来るまで黙秘』って小学校で教えといてほしいくらい」というセリフは、漫画の作者との打ち合わせのときに市川さんが言った言葉がそのまま採用されたのだそうです。
 漫画の作者の浅見理都さんは、代表作が、ドラマ化もされた『イチケイのカラス』という裁判官が主人公の漫画ですが、こちらも未読。そのうち読んでみようかと思います。
※書きました↓

ウィシュマさん死亡事件について名古屋地検に起訴処分を求める署名(8月末提出予定)

 1ヶ月前、静岡地検が、明らかに無罪の袴田巌さん再審で有罪求める立証を行う方針を表明した、というニュースがあった。

 そして今度は、名古屋地検が、明らかに有罪のウィシュマさん事件を再び不起訴の「方針」だという。

 これに関しては、検察にとって入管庁が「身内」だからだろうか、と思わされる。

出入国在留管理庁には,入国管理局の時代から,検察庁出身の職員が勤務してきた長い歴史があり,現在も,私を含む多数の検察庁出身者が,様々な部署に配属されて勤務しています。

https://www.moj.go.jp/keiji1/kenji_m29

 1999年以降の13人の入管庁(局)長官のうち、現在の菊池浩も含む10人が検察である*1

 ところで、昨年2022年9月、アメリカ・ジョージア州の郡刑務所に軽犯罪で収監されていた、当時35歳のアフリカ系アメリカ人の男性、ラショーン・トンプソンさんが、不衛生極まりない独房内で放置され続けた結果死亡するという事件が起きた。

 郡検視局は今年1月、トンプソンさんの死因を「不明」とした。だが、それに納得しなかった遺族が独自の解剖を希望し、その結果、トンプソンさんの死因は「不潔な環境で放置されたことによるトコジラミを起因とした合併症」であることが判明したという。

 以下上記記事*2からの引用。

5月に、遺族の弁護士から発表された解剖報告書では、トンプソンは郡刑務所に収監されていた3か月間で、体重が約15キロ減少し、死亡時には重度の脱水症状と栄養失調を起こしていたという。
 同報告書はまた、死亡の前月に統合失調症の治療に必要な投薬やケアをまったく受けた記録がないとも述べている。
 この報告がなされた会見では、公民権弁護士のベン・クランプ氏が、トンプソンは「拷問部屋」で暮らしていたと述べ、トンプソンの死を「米国史上最も嘆かわしい拘留中の死亡事件」と呼んでいた。

 解剖を担当した医師は報告書でこう言っているという。

43日間にわたり、トンプソンへのケアが提供されたことを示す文書記録は、最小限だった。
投薬記録には、2022年8月11日から2022年9月13日まで投薬が行われていなかったことが示されている。
(……)
死因は殺人にほかならない。トンプソンは、死ぬまで放置されたのだ。

 本当に酷い事件だ。しかし、同記事には以下のようにも書かれている。

ジョージア州フルトン郡委員会は、男性の遺族に400万ドル(約5億7千万円)の調停和解を承認した。
トンプソンの死を受けて、郡刑務所の看守長と看守長補佐、刑事捜査課の看守長補佐は全員辞任した。
この死亡事件の原因に関する捜査の詳細は、再検討のためジョージア州捜査局に引き渡されたということだ。
 では、日本の入管に収容され、同じく必要な医療的ケアがまったく与えられず放置され2021年3月に死亡した、当時33歳のスリランカ人女性ウィシュマさんの事件の場合はどうだろうか。
 ウィシュマさんが収容されていた名古屋入管の局長はじめ、この事件に関わった職員は誰一人として辞任していない。ウィシュマさんのご遺族は、2021年11月9日、名古屋入管局長を含む職員13名を殺人罪などで告訴したが、2022年6月17日、名古屋地検は「嫌疑なし」の判断をし、不起訴処分とした。
 その後、検察審査会は業務上過失致死罪について「不起訴不当」の判断を出し、検察に再検討を求めたが、最初の方で引用した記事が伝えるように、検察は再度不起訴とする「方針」だというのだ。同記事によると、(地検の?)「関係者」が「死因や死亡に至る経緯が詳細に特定できず、予見可能性や結果回避可能性という業務上過失致死罪の構成要件を満たすことは難しい」と言っているとのことだ。トンプソンさん死亡事件でも、郡検視局は当初死因を「不明」としていたが、遺族らの独自調査で死因が明らかになった。同じくウィシュマさん事件でも、その後遺族が原告となった国賠訴訟の中で一部公開されたビデオや、治療の記録などから、死亡に関する入管の責任は明らかとなった。
不起訴はまだ決定したわけではない。以下、ウィシュマさん死亡事件について名古屋地検に起訴処分を求める署名です。8月末に提出予定だそうです。

chng.it

 

 

 

 

*1:

出入国在留管理庁 - Wikipedia

*2:この日本語記事は以下の英文記事をもとにしているようだ。

殺人レストランと「入管」

 レストランの看板を掲げているので、食事しようと店に入ると、身ぐるみ剥がれて殺されてしまうという、宮沢賢治の「注文の多い料理店」のような、「殺人レストラン」があったとしましょう。料理を食べに来たら、料理をされてしまう、おそろしい店ですが、看板は「レストラン」となってます。
 店に入ると、ウェイターがいます。注文をとりにくるかもしれません。でもほんとはそれはウェイターではありません。あえて言うなら、「注文をとりにきたふりをする殺人鬼」です。店の奥には料理人がいます。料理を作っているように見えるかもしれません。でもそれは、料理人ではなく、「料理を作っているふりをする殺人鬼」です。店の掃除をしている人がいました。でもそれは、清掃員ではなく、「掃除をしているふりをする殺人鬼」です。ホラー映画ですね。

 入管に医者がいたそうです。医師免許があり、診察もしていたそうです。しかしその「診察」とは、被収容者の患者に「そこに胆のうはない」「あなたの胆石どうでもいい」などと言うようなもの*1だったそうです。またこの医者は、診察中に「不法滞在なんだから早く帰りなさい」などと言っていたそうです*2。そう、恐ろしいですね。これは、医者ではなく、いわば「診察しているふりをする入管」だったのです*3
 入管の難民認定の仕事をする難民審査参与員の柳瀬という人がいたそうです。その人は国会で「難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」と言っていたそうなのですが、2022年は1231件、2021年も1378件も「審査」していて、計算すると1件あたり6分程度しか審査に時間をかけていなかったことになるそうです*4。さらにこの人は、「何とか今の法案は通してもらわないと」「入管庁をプッシュすることはいくらでもする」と発言していたことが明らかになりました。そう、恐ろしいですね。これは、難民審査をする人ではなく、いわば「難民審査するふりをする入管」だったのです。
 いや待てよ、この「難民審査参与員」は、外部の難民専門家の顔をしながら実際は入管、だったわけですが、難民申請した人が最初に受ける難民認定の一次審査を担当するのは、入管職員なのでした…。もうウェイターの服装とかすら着てない。レストランに入ったら、普通に殺人鬼がピストル持って注文をとりに来る?みたいな倒錯した世界です。
 そんな恐ろしいレストランで起こった様々な事件が明るみに出て、問題になりました。そしたら、普通に考えて、そんな店は閉店、解体、となるでしょう。ところがなんと、殺人レストランはいまだに営業を続けていて、店長も店員も普通に「仕事」を続けているのだそうです。恐ろしい!それどころか、殺人店長がのこのこ出てきて、「不幸な事件がありましたが、今後そのような殺人事件がおこらないように厳しく対策をしてまいります」と記者会見したそうです。殺人を仕事?にしている人が、殺人が起こらないように仕事をしてまいります、て笑っちゃいます。まあ、実際は料理なんかしてない殺人レストランの店長が、レストランの店長のフリをして「今後も美味しい料理を提供するように努力してまいります」と言っているようなもの、と言ったほうが近いですかね。
 さらにさらに、この殺人レストランがある国は、「レストラン殺人が起こらないように法律を変えます」と言い始めましたが、法律のなかみを見ると、なんと、「もっと殺人をしやすくする法律」でした。この法律の国会審議中にも、いろいろな、いろいろな、いろいろな問題が噴出してきて、もう審議どころじゃないでしょう、廃案にするしかないでしょう、という状況になっているにもかかわらず、強行採決?するとか言うとるらしいです。
 こんな、ホラー映画よりホラーな法律、廃案一択ですね。直近のアクションは以下のサイトなどにまとめられています。

www.openthegateforall.org

*1:https://www.sankei.com/article/20230530-22KOPTIRERNRZM643YMMI2YJT4/
大阪出入管の医師が酒に酔った状態で外国人収容者を診察していた疑いについての弁護士らのグループが2023年5月30日大阪市内で開いた記者会見を伝える産経新聞の記事「「入管は隠していた」 収容者への酒酔い診察疑いを弁護士ら批判」(2023年5月30日)より。

「〔2022年度から勤務していたとみられるこの医師は〕支援者による収容者への聞き取り調査で問題が浮上。複数の収容者から「『不法滞在なんだから早く帰りなさい』といわれ、まともな医療をしてくれない」などと問題視する声が上がっていた。
胆石と診断されていたあるコロンビア人女性は、この医師に右腹部の痛みを訴えると「そこに胆のうはない」「あなたの胆石どうでもいい」などといわれたという。女性は会見にリモート参加し「(お酒の)においがした。一番悪い先生」と話した。」

*2:これについては、ブログ「宇宙広場で考える」の、「大阪入管常勤医「不法滞在なんだから早く帰りなさい」発言の考察」https://nobunagai.blogspot.com/2023/06/blog-post.html?fbclid=IwAR3DBayTu0Yua8eCfDsdcWreIcko8Oal5ZWF-UuxSI9LwH-AK7Piq86DQGc

を参照してください。

*3:この医師は常勤医として未だにはたらいており、給与も支給され、処分もされていないが、入管が問題を把握した後、2023年1月20日以降業務から外れていた。法務省も2月には事態を把握していた。にも関わらず、入管庁が【4月】に出した「改善策の取組状況」という報告書では、いけしゃあしゃあと改善策として「大阪に常勤医師1人(令和4年7月)」などと書いていたそうだ。法相も、4月19日の衆院法務委で「常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進などが表れている」など入管改革をアピールしていたという。

*4:ただ、柳瀬氏は「(応援含め)月に6〜8人、年に九十数名、100人に届かないくらいの申請者に会っている」と、国会発言と矛盾したことも言っているという。「「面談は年90人~100人」…16年間2000人の説明と食い違う音声か 柳瀬氏発言巡り弁護士らが入手」2023年6月3日東京新聞

www.tokyo-np.co.jp

事実ではないが可能性はある?

維新梅村みずほ氏の、参議院法務委員会での入管法改悪案についてのひどい発言が話題なっています。「憶測でしかない」などと批判されていますが、彼女の発言は、「憶測」というより論理破綻、意味不明な発言だと思います。16日の法務委員会で、弁護士らの質問状に対して答える中で、彼女は
よかれと思った支援者の一言」が原因で、「ウィシュマさんに「病気になれば仮釈放(仮放免)してもらえる」という淡い期待を抱かせ」たとの事実があるのかご教示ください。
ウィシュマさんが本当に「病気になれば仮釈放(仮放免)してもらえる」と淡い期待を抱いていたのは事実であるか、ご教示ください。」
 に対して、いずれにも
事実はありません。しかし可能性は否定できません
と答えています。
 これはむちゃくちゃな話です。「事実はない」と認めた段階で、可能性もなくなります。「昨日雨が降っていた事実はありません。しかし降っていた可能性は否定できません」と同じで、これは意味不明な文です。つまり、梅村氏が「事実はない」と認めた瞬間にいわば試合終了であり、梅村氏の負けは確定しているはずです。あとは撤回と謝罪しかありえません。にもかかわらず、梅村氏は、「しかし可能性はあります」などという意味不明な文を付け加え、要するに、まるで、まだ負けていないような、試合が続いているかのような印象操作をしているのだと思います(そこまで考えてやっているのではないかもしれませんが)。
 その意味で、梅村氏の発言を「憶測」と言ってしまうと、その印象操作に乗ってしまうことになるのではないかと少し気になります。「憶測」とは、真偽不明なことについて勝手に推測して述べることだと思いますが、この件に関しては真偽はすでに定まっている(梅村氏自身が認めている)のであり、彼女がしているのは意味不明な「悪あがき」「負け惜しみ」ではないか、と私には思えます。